小児科
神経・発達外来のご案内
子どもが生まれてから成人になるまでに、新生児期、乳児期、幼児期、学童期、思春期/青年期を通過します。この間に、さまざまな神経の病気や発達の問題に遭遇することがあります。当科は、子どもの神経系(脳、脊髄、末梢神経、筋を含みます)の疾患、運動、精神、心理の問題すべてに対応する専門外来です。小児科専門医であると同時に日本小児神経学会が認定する「小児神経専門医」でもある医師が診療し、問題や不安を持つ子どもとご家族の問題を解決し、支援します。
子どもには、幼児期以降ならどの年代でも、心理的問題、心因による多様な症状が出ることがしばしばです。精神心理的発達も神経の発達のうちですから、この専門外来を受診してください。脳神経系と心の問題すべてに対応します。
Q&A
子どもの神経と発達に関するご質問にお答えします。
- どのような病気が診療の対象ですか?
- 人間の発達は脳が請け負っていますので、脳、せき髄、末梢神経、骨格筋の問題すべてが神経外来の対象になります。
神経(筋)疾患
代表的な疾患群を示します。
けいれん性疾患 | てんかん、熱性けいれんなどで、繰り返しぼーっとする、手足を震わせる、けいれんを起こす、体の一部がぴくぴくする、突然変な動作をする、などの症状があります。数分で収まる発作であれば、翌日以降に一番近い専門外来を受診してください。 |
---|---|
脳性まひ | ほとんどは乳児期に運動の遅れで気づかれますが、軽い場合には、幼児期以降に歩き方がおかしい、速く走れないなどがみられます。 |
炎症性・免疫性神経(筋)疾患
髄膜炎、脳炎、脳症:多くは発熱、けいれん、意識障害、異常行動を示します。
脊髄炎 | 突然歩けなくなる、下肢に力が入らなくなる、下肢の感覚が異常になるなどの症状が出ます。緊急に受診してください。 |
---|---|
末梢神経炎 | 子どもにみられるのはギランバレー症候群といって、突然、下肢が動かなくなる、力が入らなくなる、歩き方がおかしくなるなどの症状が発症します。緊急に受診が必要です。 |
ADEM(急性散在性脳脊髄炎) | 発熱、頭痛、意識障害など、多彩な症状が次々に現れます。緊急に受診が必要です。 |
急性小脳失調症 | 幼児期に多いのですが、歩けなくなる、ふらふらする、お座りができない、うまく話せないなどを発症します。緊急に受診が必要です。 |
重症筋無力症 | 幼児期以降に発症します。「眼瞼が下がってきて上げられない」眼筋型と、そのうちに全身の筋力が疲れやすくてごろごろする等の「全身型」があります。どちらも、一番近い神経外来を受診してください。 |
筋疾患
小児期に発症する多くの筋疾患がありますが、運動発達の遅れ、走れないなどが症状です。筋炎は上気道炎などに合併して骨格筋が痛い、力が入らないなどの症状が出ます。
神経変性疾患
今までできていたことが徐々にできなくなってきた、ときには神経系の一部に変性疾患がある可能性があります。医学的精査が必要です。
発達の問題
- 運動発達の遅れ
- 3~4か月で頸が座り、7~8か月でお座りをし、1歳を過ぎて歩くなどの運動発達には個人差があります。健診などで遅れているといわれた場合、あるいは遅れているかもしれないと心配な場合は、ご受診ください。
- 精神発達の遅れ
- 一番気になるのは、言葉の発達でしょう。2歳近くなっても意味のある言葉を話さない、1歳半過ぎても何だかわからない言葉らしきものを発している、あやしても反応が悪いなど、発達上の心配事は何でもご相談ください。何を言っても同じことを言い返す、視線が合わないことも、発達上の問題です。
- 視力・聴力の発達の問題
- 乳児期から弱視の場合には、目を見ずに明るい電灯をじっと見ている、目の動きがおかしい、常に目を押している、などの症状があります。難聴がある場合には言葉の発達が遅れます。
- 多動
- 幼児期は誰もが多動ですが、まるで電動の玩具のようにじっとしていない、親が疲れ切ってしまう、不注意でなくし物が多い、話しかけても一度では聞いていないように見えるなどの行動がある場合、親が注意することに疲れる程であれば、問題がある可能性があります。
- 行動上の問題
- 衝動性が強い、こだわり行動が強い、新しい環境になじめない、すぐにパニックになる、大泣きすると1時間でも泣いている、床に頭突きを繰り返す、奇声を上げる、などは発達上の問題があることがあります。
学童期以降は、多動、離席、暴力、言ってはいけないことを言ってしまう、いつも大声で話す、先生の指示通りの行動ができないなど、多彩な問題が生じます。決してしつけの問題ではないので、ご相談ください。 - チック
- 目をぱちぱち、肩をすくめる、などの運動のほかに、咳を繰り返す、声を出す、変なことを言うなどの症状が伴うこともあります。男子に多い疾患です。
発達障がい
発達の遅れ、発達の偏りなど、発達途上で生じる問題が小児期、学童期、青年期には多数あります。これらはしばしば育児のしにくさで気づきますが、親やご家族が育児の仕方が悪いのだと思ってしまうと、かえって症状は悪化します。
小さな問題でも「とても育てにくいなあ」と感じたら、専門医への相談が第一歩です。
- 知的な発達の遅れ
- 全般的な知的発達の遅れも、多様な疾患で生じることがありますので相談してください。なかには内分泌疾患が原因で、治療ができる状態もあります。
- 学習障がい
- 字を読むこと、書くこと、算数学習など特定の学習がとくにできず、子どもも親も悩むことがあります。まず適切な発達検査をして、問題のありかを正確に把握することが問題解決の第一歩です。
- 自閉症スペクトラム障がい
- 知的に問題があるタイプと知的発達は正常のタイプがあり、知的発達が正常のタイプの中には、言葉の発達にも問題がないけれど、社会性発達だけが問題のアスペルガー障がいというタイプなど、多様です。
幼児期には言葉の発達で気づくことが多いのですが、多動という症状がめだつ例、運動発達の遅れがめだつ例などさまざまです。「育てにくいなあ」と親が強く感じる子どもの中に、この発達障害があることがありますので、「自閉」という用語に捉われずにご相談ください。診察、発達検査、ときには画像検査や脳波検査(必須ではありません)などから診断し、必要な療育体制、育児体制を整え、幼稚園や学校、家庭での問題を解決していきます。
最新の米国の統計では、88人に1人がこの問題を持つともいわれ、子どもの時期も青年期以降も生活上、学習上の多様な問題を生じます。「社会性」とは、社会の中で理由なく受け入れている行動パターンを意味しますが、この能力が乏しくても個性的な能力を発揮する方もいますので、病気とうよりも、人間の在り方の一つ、と考えるべきかもしれません。ですから在り様を否定するのではなくて、その子らしくよりよく生きられるように医師、親、教師が手を取り合って支援すべき存在なのです。 - 注意欠陥多動性障害
- 不注意、衝動性、多動の症状が年齢に応じてさまざまな問題を生じる発達上の問題で、全学童の5%以上にも上るといわれています。知的にはよいのに不注意で損をしていたり、考える前に手が出たり、言葉が出たりなど、「落ち着かなさ」が子ども自身と周囲にたくさんの問題を引き起こします。診察と検査、そして必要例には薬物治療等で対応します。
精神神経学的な問題
- 睡眠障害
- 乳児期から睡眠のパターンが悪い場合と、学童期以降に問題が生じる場合があります。発達障害に睡眠障害を合併することもあります。不眠、過眠、睡眠相(←わからない)がだんだんずれる疾患、入眠発作で突然寝てしまう疾患などもあります。
- 強度の不安
- 発達障害に合併することもありますが、思春期以降に単独で出現することもあります。不登校の背景に社会不安などさまざまな強い不安があることが少なくありません。
- 不登校
- 不登校の背景は多様です。背景に気がつかないでいた発達上の問題があることもあります。まずは、経過の詳細なメモを持って受診してください。
- 強迫症状
- 本人はしたくないのにせざるを得ない衝動に駆られている状態です。叱るだけでは治らず、本人は余計つらくなります。適切な診断と治療が必要です。
その他の疾患
- 遺尿症
- 夜だけ尿を漏らすのを夜尿症、昼にも漏らすのを遺尿症と呼びます。我慢しすぎの場合、膀胱が過緊張の場合などさまざまな状態がありますのでご相談ください。
- 遺糞症
- いつも少し便が漏れている場合が多いのですが、便秘の場合、トイレ環境の問題などがあります。便秘も大腸に疾患がある場合と排せつ習慣の問題の場合では、対応が異なります。
- 神経・発達外来に行くべき状態なのかどうか判断できないときはどうすればよいですか?
- 判断できないけれど、もしかしたら…という状態でも、ご心配事はいつでもご相談ください。もし神経・発達上の問題でなかった場合には、適切な外来で対応します。
- 小児科の先生に相談したのですが、問題ないと言われました。でも、心配なことがあります。どうしたらよいでしょうか?
- 発達上の問題は、小児科専門医でも見えにくいことがあります。もしご両親が引き続きご心配であれば、専門外来をご受診ください。問題がないかもしれませんが、不安を解決することは安心して育児をするうえで大切です。
- 2歳の男児です。気に入らないと頭を壁に打ち付けたり自分でぶったりしています。おかしくならないかと心配です。
- 発達上の問題があることもないこともありますので、一度専門外来をご受診ください。対応の仕方を変えることで改善します。
- 1歳児です。まだ歩きません。受診して「遅れている」と宣告されることが心配です。発達を心配しているのですが、宣告も心配で受診できません。
- 遅れには、何かの疾患がある場合、発達遅滞が元来ある場合、正常の亜型である場合があります。正常の亜型の場合にはいずれは歩き出しますが、ちょっとした対応の変化や軽いリハビリテーションで、独歩が早められたりします。毎日心配しているよりも、受診してできることをしてあげるほうが、安心につながります。
- 白衣を見ると大泣きします。泣いていては診察できないと言われてしまいます。
- 泣いていて診察できないことはないですが、泣いていないときの方が、よりよく神経系を診られます。受付で白衣は苦手とお伝えください。白衣なしで診察します。
- 眠りに落ちる間際にぴくぴくします。それが発作かどうかわからないので心配です。
- 眠りに落ちる間際だけの場合には、入眠時ミオクローヌスといって心配ないものがあります。あまり長く続いている場合や全身がぴくぴくするなどの場合には、携帯電話でビデオを撮るなどしてご受診ください。
- 受診には何かを持参する必要がありますか?
- 母子手帳は必ず持参してください。
さらに、気になる症状を書いたメモ(いつから気になっているか、どういう症状かなど)、診察室ではお子さんが騒いだりするとなかなか全部をお話しできないと思います。メモ書きをご持参くださると大変有用です。
発達上の問題で学童以降の場合には、成績表、国語のノート、算数のノート、連絡帳、描いた絵などがとても参考になることがありますが、これらは二回目以降の外来でも十分です。