外来化学療法室
ご挨拶
近年、抗がん剤治療が広く外来で行われるようになり、当院でも2011年4月の病院リニューアルを契機に、外来化学療法室を新病棟(B棟)に増床し、16床になりました。
それぞれ専用のテレビが設置されたリクライニングチェアとベッドがあり、患者様のお好みや体調で選ぶことができます。
また、無料の飲み物もご用意し、患者様お一人おひとりがお飲物を飲み、テレビを観賞しながら治療を受けられます。
また、当院には各診療科学会が認定した腫瘍専門医が多数在籍しており、対象疾患は、胃がん、大腸がんなどの消化器がん、肺がんなどの呼吸器がん、前立腺がんなどの泌尿器がん、子宮がんなどの婦人科がんなど多岐にわたります。
各診療科のつながりは密接で、お互いのノウハウを共有していますので、特に副作用の対応については極めて有用な体制です。外来化学療法においては、副作用の発見や対応が入院時に比べて遅れる不安もありますので、この点に関しては、あらかじめ薬剤師が丁寧にご説明し、患者様ご自身で自己管理に努めていただいております。
現在、外来化学療法を実施されている患者様は月に約100名、1日平均4名で、受け入れにはまだまだ余裕がございます。
外来化学療法の流れ
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予約:外来化学療法の予約は、主治医が電子カルテで直接申し込みますが、患者様が集中した場合には、実施日の変更をお願いすることがあります。
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実施の可否:当日、患者様は受付後すぐに採血などを行い、各診療科で主治医を中心に患者様の全身の状態や検査データを確認し、化学療法実施の可否を決定します。
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外来化学療法室への移動:主治医が実施可能と判断すると、必要に応じて血管確保を行い、外来化学療法室へ移動していただきます。
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ミーティング:外来化学療法室では、医師、薬剤師および看護師によるミーティングを行い、初めての患者様には薬物療法の計画表、投与量、投与速度を再確認し、2度目以降であれば、前サイクルでの副作用の有無、注意点をチェックします。
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抗がん剤の調整・治療:ガウン、手袋、帽子を着用した薬剤師が安全キャビネット内で抗がん剤を調合し、いよいよ実施となります。終了まで専従看護師が定期的に巡回し、副作用をいち早く発見する体制をとっています。すぐ隣には救急室があり、万一重篤な副作用が発症した場合には、救急医の協力が得られる体制になっています。
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会計:副作用のないことを確認後、会計を済ませてお帰りいただきます。
他部門の協力体制
- キャンサーボード:
- 腫瘍カンファランスを定期的に開催しています。また、新しい薬物療法の計画表の作成や難治性がんの治療法の決定に際しては、臨時で開催します。
- 栄養室:
- 吐き気や口内炎などにより通常の食事摂取が不可能な場合には、栄養士が調理法などを含めての栄養指導を行います。
- 医療相談室:
- 治療自体に対する不安以外にも、精神的、経済的不安の相談に応じています。医療ソーシャルワーカーや臨床心理士が対応し、緩和ケアの相談を受けることも可能で、在宅医療や訪問看護の支援をしています。
現在4名の専従看護師が1日1~2名体制で看護にあたっていますが、いずれの看護師も、化学療法看護で5年以上の経験を有しています。
ベッド数は16床で、西側には大きな窓があり、窓からは光が差し、緑の木々が立ち並ぶ様子や、四季折々の景色を眺めることができます。一方、薄明かりのもと、ゆったりと治療時間を過ごすスペースもあります。
ベッドの形態は、リクライニングベッドとリクライニングチェアの2種類からお選びいただけます。すべてのベッドにテレビが完備されており、また、寝具類はお一人様ごとに交換しています。
患者様の情報は、医師をはじめ看護師、薬剤師等で共有が図れるよう台帳管理を行っています。また、毎朝始業時には、医師、看護師、薬剤師とともに当日行う化学療法件数、各患者様の治療内容、注意事項等についてカンファレンスを行っています。
治療中には、看護師が定期的にベッドサイドを巡回し、副作用の早期発見、早期対応に努めておりますので、何か相談したいときにはぜひ、お気軽にお声をかけてください。医師、看護師、薬剤師、栄養士、医療ソーシャルワーカーが連携して速やかに対応いたします。
私たちは、患者様お一人おひとりのニーズに沿った看護ができるよう、日々精進しております。よろしくお願いいたします。
薬剤師より
外来化学療法室での治療における薬剤師の役割をご紹介します。主な役割として、下記の5点があります。
- 抗がん剤の正確な調剤
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現在、さまざまな抗がん剤を治療に使っています。しかし、抗がん剤は投与量や投与スケジュールを誤ると重大な事故を引き起こすため、厳重な管理や正確な調製が必要です。医師が処方した内容を事前に何度も確認し、疑問のある場合には速やかに医師と連絡を取り、患者様それぞれにあった投与量の確認を行います。
また、専用の部屋を完備し、薬剤師が混合調製をしています。 - 抗がん剤の治療スケジュール・副作用の説明
- 患者様のがんの種類、病状により、使用する抗がん剤の種類や治療スケジュールが異なるため、治療前に「お薬説明書」を用いてご説明を行っています。また、副作用を予防するためにご自宅で服用する飲み薬を処方することもあります。最大の効果があるように服用タイミングなどをご説明します。
- 自宅で起こる体調不良時の対処法の説明
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副作用の多くは、点滴翌日以降に起こります。自宅で起こる可能性のある症状についてや、体調不良となった際にどのように対応すればよいか、自宅で安静にするのか、またはすぐに病院に来るべき症状かなどを詳しくご説明します。
不安を軽減することにより、ご家族とともにいつもと同じような生活を送ることが、外来治療の最大の利点でもあります。 - ベッドサイドでの副作用確認
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副作用は、抗がん剤を使用した治療のほとんどで起こります。代表的な副作用である「吐き気」や「脱毛」を気にされる方が多くいらっしゃいます。しかし、副作用の程度や種類、出現時期は抗がん剤によって異なりますし、予防できる副作用もあります。
また、一度きりで点滴治療が終了することはあまりなく、点滴治療の回数を重ねることにより、副作用の程度が変化していくものもあります。点滴治療に来院された際には、薬剤師は必ず患者様のお顔を見て、自宅にいた時の様子や現在の状況をお伺いしてご確認し、適切な今後の方針や副作用対策を医師・看護師とともにご提案いたします。 - 医師、看護師などとの綿密な連携
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私たちは、医師、薬剤師、看護師による合同ミーティングの機会を設け、患者様の生活にあわせた、より適切な治療を検討しています。
点滴治療を外来で行い、自宅に戻られてからも、より快適で安心感のある毎日が送れるように、患者様、ご家族のお手伝いができればと考えています。
患者様によっては、なかなか医師へ相談できないこともあるでしょう。私たち薬剤師は、医師、看護師などと綿密な連携を取り、入院から退院後の外来通院、その後まで、患者様それぞれの状況にあわせ、「最大の効果と最小限の副作用」を目標に努力しています。私たち医療スタッフと患者様はともにチームであると考えています。不安なことがあれば、いつでもどんな小さなことでもお伝えください。
外来化学療法室の今後の展望
分子標的薬をはじめとして、抗がん剤の種類は増加の一途であり、また治療計画も複雑化しています。私たちスタッフは日夜研修などに参加して、外来・入院を問わず、抗がん剤や支持療法(抗がん剤を使用した際の副作用や痛み・苦しみを抑えること)全般にわたる新たな知識を吸収し、創意工夫、発展に努力しています。
今後は地域医療がんネットワークの充実を図り、初期治療から緩和ケアまで、患者様のQOLのさらなる向上に貢献できるよう一層の努力をしてまいります。
患者様の声
- 【 呼吸器外科・50歳代男性 】
- 2週間ほど入院して始めた3種類の抗がん剤を使用した肺がんの化学療法ですが、1コース目で副作用の程度と出現時期がだいたいわかってきたので、それからは外来での治療を継続しています。 6コース目からは抗がん剤が1種類になりましたが、現在も治療を継続しています。職場の理解もあって、会社勤めを続けながら普段の生活のリズムを大きく変えることなく、通院で治療が続けられていることを実感しています。 外来化学療法室ではリクライニングチェアにもたれ、窓の外の木々が見えるゆったりとした雰囲気のなか、いつも身近にいるスタッフにちょくちょく声をかけてもらいながら、安心して治療を受けています。
- 【 婦人科・60歳代女性 】
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卵巣がんのため抗がん剤治療を受けていました。1日で終わる治療ですが、1回目は副作用が心配とのことで、入院での治療を勧められました。
抗がん剤の副作用は耐え難いとの印象がありましたが、血圧計や心電図をつけて6時間ほどかかったものの、その日は吐き気もなく、あっけなく終了しました。翌日に筋肉や関節の痛みがあり、痛み止めを飲みましたが、軽いため退院しました。2度目は外来化学療法を行いました。前回の経験であまり辛くない治療であることがわかっており、安心して受けられました。
月1回、合計6回の治療でしたが、季節は暑い夏から秋、そして冬を迎え、最後の6回目は雪を眺めながらの1日でしたが、化学療法室はいつも快適でした。実施中は看護師さんが巡回してくれ、また薬剤師さんが自宅での注意点についても丁寧に説明してくれたので、安心して帰宅できました。 自宅では好きな物を食べ、また誰にも気兼ねせず過ごせ、開放感いっぱいでした。なお、化学療法中は夫がずっと付き添ってくれ、帰宅後にも労わってくれました。夫に感謝です。