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循環器内科

循環器内科・心臓外科合同抄読会 平成27年9月

平成27年09月15日(担当:武田)

Postural modification to the standard Valsalva manoeuvre for emergency
treatment of supraventricular tachycardias (REVERT): a randomised controlled trial
Lancet. 2015; (published online Aug25.) http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(15)61485-4.

【背景】
発作性上室性頻拍(PSVT)治療として、バルサルバ法は広く行われているが、 頻拍の停止率は5-20%と低く、結局、不快感を伴うアデノシン注射治療を必要とする。 今回、体位を変えたバルサルバ変法の効果を調べた。

【方法】
英国の救急施設においてPSVTを発症した患者をランダムに1:1にバルサルバ 従来法群と変法群に割り付けた。両群とも40mmHgの圧で呼気し、そのまま15秒息こらえを行った。変法群はその後、背臥位となり、他動的に下肢を挙上した。1次アウトカムは治療後1分の時点での洞調律復帰とした。

【結果】
各グループ214名ずつの患者に割り付けた。従来法群では37名(17%)が洞調律に復帰し、変法群では93名(43%)が洞調律に復帰した(p < 0.0001)。

【考察】
PSVT治療において、息こらえに引き続き下肢挙上を行うバルサルバ変法は初回治療として検討されるべきであり、患者にも教育しておくべきである。

平成27年09月8日(担当:柘植)

Effect of Remote Ischemic Preconditioning on Kidney Injury Among High-Risk
Patients Undergoing Cardiac SurgeryA Randomized Clinical Trial JAMA. 2015;313(21):2133-2141. doi:10.1001/jama.2015.4189.

【背景】
急性腎障害は、心臓手術における頻度の高い合併症であるが、急性腎障害のリスクを軽減する介入法は確立されていない。

【方法】
ドイツの4病院で2013年8月から2014年6月にかけて、心臓のオンポンプ手術を受ける予定の患者のうち、急性腎障害リスクが高い患者(Cleveland Clinic Foundationスコアが6以上)240人を、カフ加圧 群とコントロール群にランダムに割り付けた。麻酔導入後に一方の上腕に血圧計のカフを装着。カフ加圧群には、遠隔虚血プレコンディショニング操作を実施した。コントロール群には、シャム処置を行った。主要評価項目は、術後72時間以内のKDIGO基準に基づく急性腎障害の発生。副次的評価項目は、術後72時間以内の急性腎障害(中等症~重症)、入院中の透析施行、ICU入院期間、入院中の心筋梗塞と脳卒中の発生、院内死亡、30日総死亡、術後24時間以内の急性腎障害バイオマーカーの変化に設定。

【結果】
結果はカフ加圧群では、急性腎障害の発生が有意に軽減された。急性腎障害は、カフ加圧群37.5%とコントロール群52.5%で発生し、絶対リスクは15ポイント減少した(95%信頼区間2.56-27.44、P=0.02)。カフ加圧群では、入院中に透析が施行率も減少(5.8% VS 15.8%)。絶対リスクは10ポイント減少(2.25-17.75、P=0.01)。ICU入院期間も短く、それぞれ3日と4日で、差は有意だった(P=0.04)。心筋梗塞、脳卒中、死亡には有意な影響は見られなかった。術後の急性腎障害バイオマーカー値も差が認められた。尿中のIGFBP-7とTIMP-2の、人工心肺装着から4時間の時点の濃度の積は、カフ加圧群が0.36ng/mL2/1000、コントロール群は0.97ng/mL2/1000で、加圧群のほうが低値であった(P<0.001)。遠隔虚血プレコンディショニングに関連した有害事象は報告されなかった。

【結論】
心臓手術を受ける急性腎障害ハイリスク患者に対して、遠隔虚血プレコンディショニングを行うと、急性腎障害の発生や透析の必要性を低下させた。