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循環器内科

循環器内科・心臓外科合同抄読会 平成27年7月

平成27年07月21日(担当:梅田)

Clostridium difficile infection after cardiac surgery: Prevalence, morbidity, mortality, and resource utilization.
J Thorac Cardiovasc Surg. 2014 Dec;148(6):3157-65.e1-5. doi: 10.1016/j.jtcvs.2014.08.017. Epub 2014 Aug 14.

【背景】
感染予防対策が進歩してきているにもかかわらず、病院関連のクロストリディウム感染(CDI)の有病率は増加傾向にある。そこで、開心術後のCDI関連の有病率や合併症に関する検証が行われた。

【方法】
2005年1月から2011年1月にクリーブランドクリニックで行われた開心術症例22952例を対象とした。
CDIは、毒素に対する酵素免疫測定法、またはPCR法で診断され、その結果と長期生存をマッチした非感染群と比較検討した。

【結果】
術後平均9日間で145例の患者がCD陽性となり、(135例は酵素免疫測定法、11例はPCR法で診断された。) 77例は他院から搬送。73例は術前に抗生剤を使用。79例はPPIを使用していた。
CDI群は、非感染群と比較すると、術前からの合併症が多く、再手術、輸血を受けている症例が多かった。
すべての症例には、メトロニダゾールもしくはバンコマイシンが投与された。
16例が死亡し、中毒性結腸炎になった10例のうち5例が死亡。全結腸切除が行われた4例のうち3例が生存した。
CDI群は、非感染群と比較して、敗血症、腎不全、再手術、術後長期人工呼吸管理、長期入院が有意に多く、3年生存率も有意に低かった。

【結語】
CDIの有病率は増えてきており、開心術後の合併症や死亡率に大きく関与していた。

平成27年07月14日(担当:布田)

Less-Tight versus Tight Control of Hypertension in Pregnancy N Engl J Med 2015; 372:407-417January 29, 2015

【背景】
妊娠中の高血圧を緩やかにコントロールした場合と厳格にコントロールした場合で、妊娠合併症への影響が異なるかどうかは明らかにされていない。

【方法】
妊娠 14 週 0 日~33 週 6 日の女性で、蛋白尿を伴わず、妊娠前からの高血圧または妊娠高血圧を有し、外来拡張期血圧が 90~105 mmHg(降圧薬を使用している場合は 85~105 mmHg)で、胎児が生存している例を対象に、多国間多施設共同非盲検試験を行った。妊婦を、緩やかなコントロール(目標拡張期血圧 100 mmHg)と厳格なコントロール(目標拡張期血圧 85mmHg)に無作為に割り付けた。複合主要評価項目は、妊娠喪失または生後 28 日間における48 時間を超える高度の新生児ケアとした。副次的評価項目は、産後 6 週まで、または退院までのいずれか遅いほうに発生した重篤な母体合併症とした。

【結果】
987 例を解析の対象とし、その内74.6%が妊娠前から高血圧を有していた。平均拡張期血圧は緩やかなコントロール群のほうが 4.6 mmHg(95%信頼区間 [CI] 3.7~5.4)高かったにもかかわらず、主要評価項目の比率は緩やかなコントロール群の 493 例と厳格なコントロール群の 488 例とで同程度であり(それぞれ 31.4%と 30.7%,補正オッズ比 1.02,95%CI 0.77~1.35)、重篤な母体合併症の比率も同程度であった(それぞれ 3.7%と2.0%,補正オッズ比 1.74,95% CI 0.79~3.84)。重症高血圧(収縮期血圧 160 mmHg 以上または拡張期血圧 110 mmHg 以上)は緩やかなコントロール群の 40.6%、厳格なコントロール群の 27.5%で生じた(P<0.001)。

【結論】
妊娠中の高血圧の緩やかなコントロールは母体の重症高血圧の頻度において、厳格なコントロールと比較して有意に高いことに関連していた。しかし、妊娠喪失や高度の新生児ケア、母体合併症全般のリスクには両群間で有意差が認められなかった。

平成27年07月07日(担当:高田)

Effect of a Retrievable Inferior Vena Cava Filter Plus Anticoagulation vs Anticoagulation Alone on Risk of Recurrent Pulmonary Embolism A Randomized Clinical Trial JAMA. 2015;313(16):1627-1635

【背景】
急性静脈塞栓症の患者では、抗凝固療法に加えて、回収可能型の下大静脈フィルターが留置されることが多いが、下大静脈フィルターの効果については明らかでない。

【目的】
急性肺塞栓患者において抗凝固薬単独もしくは下大静脈フィルターを追加した場合の肺塞栓再発に対する効果と安全性を評価する。

【方法】
ランダム化、オープンラベル、blinded end point試験。2006年8月から2013年1月までに下肢の静脈血栓による急性肺塞栓で入院した患者を、抗凝固療法単独群とフィルター追加群に分けて6か月間観察した。参加施設はフランス17施設。

【治療】
患者は十分な抗凝固療法を最低6か月は行った。フィルター留置群では3か月後にフィルター抜去を予定した。

【主要評価項目】
主要評価項目は3か月までの症候性肺塞栓の再発。二次評価項目は6か月までの肺塞栓の再発、下肢静脈血栓、出血、3か月と6か月での全死亡、およびフィルターの合併症。

【結果】
フィルターグループでは193例にフィルターが留置され、抜去されたのは抜去を試みた164例中153例であった。3か月までの肺塞栓再発は、フィルター群で6例(3.0%)、コントロール群で3例(1.5%)であった。6か月までの結果も同様であった。他の評価項目でも2群間に有意さはみとめられなかった。フィルター血栓症は3例に起きた。

【結論】
重症肺塞栓で入院した患者において、抗凝固療法にフィルターを追加する治療は3か月までの肺塞栓の再発リスクを有意に低下させることはできなかった。この結果から抗凝固療法の可能な肺塞栓患者において抜去可能型下大静脈フィルターを用いることをサポートしない結果となった。