循環器内科
循環器内科・心臓外科合同抄読会 平成27年5月
- 平成27年5月26日(担当:佐竹)
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Efficacy of β blockers in patients with heart failure plus atrial fibrillation: an individual-patient data meta-analysis The Lancet Volume 384, No. 9961, p2235–2243, 20 December 2014
【背景】
心房細動と心不全はしばしば共存し心血管死を招く。βブロッカーは左室収縮の低下した症候性心不全患者に適応があり生命予後を改善することが示されているが、心房細動を合併した患者への有効性は明らかではない。それ故、メタ解析によって、心不全患者に対するβブロッカーの有効性を心房細動合併例と、洞調律例とで比較検討した。【方法】
βブロッカーを心不全例に使用した10の無作為化比較試験の患者データを使用した。対象が洞調律であるか、心房細動であるかは、ベースラインのデータがどちらかで判断した。(そのため、発作性心房細動が洞調律群になった可能性はあり。)主要エンドポイントは、全死亡とした。【結果】
登録数18,254例 (洞調律76% 心房細動17%)
平均追跡期間:1.5年【死亡率】
(βブロッカー群の対プラセボ群ハザード比)
洞調律例0•73, 0•67—0•80; p<0•001
心房細動例0•97, 0•83—1•14; p=0•73【考察】
ESC、 AHA/ACCのガイドラインでは、心房細動を合併した心不全にβブロッカーの使用が奨励されているが、洞調律と違い、心房細動では、より遅い心拍数は予後と関係がないことが2014年のJACCに掲載されている。本研究では、心房細動を合併した心不全患者におけるβブロッカーの使用は、全死亡を減少させず、スタンダードな治療ではないかもしれない。【結論】
今回の結果では、心房細動を合併した心不全患者の予後を改善させる標準治療として、βブロッカーを、レートコントロール目的以外に進んで使用すべきではない。 - 平成27年5月12日(担当:吉永)
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Surgical Ablation of Atrial Fibrillation during Mitral-Valve Surgery N Engl J Med 2015; 372:1399-1409
【背景】
僧帽弁手術を受ける患者の30-50%に心房細動がみられる。心房細動は生存率の低下と脳卒中リスクの増加に関連している。心房細動の外科的アブレーションは広く行われているが、その安全性や有効性に関するエビデンスは限られている。【方法】
持続性心房細動もしくは長期持続性心房細動の患者260例が、僧帽弁手術時に外科的アブレーションが行われたアブレーション群とアブレーションが行われなかったコントロール群に振り分けられた。
アブレーション群はさらに、PV isolation群と両心房メイズ(Cox-maze Ⅲ)群に分けられた。【結果】
6か月と12か月の両時点における心房細動が発生していない割合は、アブレーション群がコントロール群より多かった。
PV isolation群と両心房メイズ群では、心房細動が発生していない割合に有意差はなかった。
1年後の死亡率は、アブレーション群で6.8%、コントロール群で8.7%であった。
アブレーション群はコントロール群と比較して、永久ペースメーカー植え込みの割合が多いという結果であった。
また、両群間で、心・脳血管有害事象、重篤な有害事象、再入院に関して有意差はなかった。【結語】
持続性心房細動もしくは長期持続性心房細動の患者に対する僧帽弁手術時の心外科的アブレーションは、1年の時点で、心房細動の回避率を上昇させた。
しかし、永久ペースメーカー植え込みのリスクも上昇させた。