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循環器内科

循環器内科・心臓外科合同抄読会 平成27年1月

平成27年01月27日(担当:柘植)
Transfusion Requirements After Cardiac Surgery The TRACS Randomized Controlled Trial 2010 Oct 13;304(14):1559-67.

【背景】
心臓外科手術では輸血施行率が高く、40%-90%といわれている。重症貧血は心臓外科手術後の罹病率と死亡率の独立した危険因子と言われている。輸血はコストが高く、また感染症、神経系合併症、腎不全などの有害事象発生率、術後の生存率低下との関連があるとされている。輸血はヘモグロビンやヘマトクリットの低下に基づいて行われることが多いが、輸血を開始する基準に関して、エビデンスに基づくガイドラインはない。

【方法】
前向き無作為化対照試験で、人工心肺を用いて行われた待機的手術患者502例を対象とし、十分量の輸血を行う群と輸血を制限する群に割り付けた(除外症例:18歳未満、緊急手術、大動脈手術、慢性貧血、凝固障害、肝障害、末期腎臓疾患、同意拒否の患者)。十分量の輸血を行う群は、手術開始から集中治療室を出るまでの間、ヘマトクリット値が30%未満になった時点で赤血球輸血を行い、輸血制限群は、ヘマトクリット値が24%未満になった時点で赤血球輸血を行った。
一次エンドポイントは術後30日間の全死亡率および入院中の重度合併症発生率(心原性ショック、ARDS、ARFの発症)を含む複合エンドポイントとした。ベースラインでの両群の特性および手術中における術式に関連した変数は、両群間で同等であった。

【結果】
Hb値は、十分量の輸血群で10.5g/dL(95%CI:10.4~10.6)、輸血制限群で9.1g/dL(95%CI:9.0~9.2)であった(p<0.001)。輸血施行率は輸血制限群と比較し,十分量の輸血群に多くみられた(78% vs. 47%,p<0.001)。輸血された赤血球総単位数は、十分量の輸血群で613、輸血制限群で258であった(p<0.001)。新鮮凍結血漿、血小板ま、寒冷沈降物の使用に関して群間差はみられなかった。一次複合エンドポイントは、十分量の輸血群の10%(95%CI:6%~13%)、輸血制限群の11%(95%CI:7%~15%)にみられた(群間差1%[95%CI:−6%~4%,p=0.85])。多変量Cox解析において、輸血されたRBCの単位数と術後30日間の死亡リスク上昇に関連がみられ、そのHRは1.2であった(95%CI:1.1~1.4,p=0.002)。

【結論】
輸血の制限は周術期の予後に影響を与えなかった。

平成27年01月20日(担当:高田)

Is Epinephrine During Cardiac Arrest Associated With Worse Outcomes in Resuscitated Patients?
Florence D, Wulfran B, et al.
J Am Coll Cardiol 2014;64:2360–7

【背景】
エピネフリンは自発循環復活(ROSC)に必須であるが、心停止回復後への影響は議論の余地がある。

【目的】院外心停止患者のうち心拍再開した患者において、病院到着前に投与されたエピネフリンと機能的生存との関係を調査する。

【方法】2000年1月から2012年8月までに、cardiac arrest centerに入院した、院外心停止後心拍再開した全患者を対象とした。
エピネフリンの使用はyesかnoによる記録か、doseにより記録を用いた。退院時の神経障害については、cerebral performance category1または2を良好とした。解析は、多変量ロジスティック解析、傾向スコア、及びマッチングにより行った。

【結論】
1556名の対象患者のうち、73%の1134人がエピネフリンの投与を受けており、このうち17%の194人が良好な予後であったが、エピネフリン非投与群では、422人のうち63%の255人が良好な予後であった。このエピネフリン投与者での予後の神経学的予後の悪さは、心停止の時間や入院後の治療に関係なくみとめられた。エピネフリン非投与群に比べて、エピネフリン投与者の調整オッズ比は、1mg投与群で0.48、2-5mgで0.30、5mgより上で0.23でdoseに比例していた。また、エピネフリン投与群では、エピネフリン投与が遅いほど予後不良であった。

評価】
この観察研究の結果から、エピネフリン投与は入院後の治療にかかわらず予後不良であることが示唆された。心停止患者でのエピネフリン投与が長期予後と相関するかは、今後検討が必要である。

平成27年01月13日(担当:菅野)

Early eicosapentaenoic acid treatment after percutaneous coronary intervention reduces acute inflammatory responses and ventricular arrhythmias in patients with acute myocardial infarction:A randomized, controlled study
International Journal of Cardiology 176 (2014) ; 577-582

2010年11月から2012年12月にかけて救急搬送されたAMI患者115名を57名のEPA投与群と58名のコントロール群に分け追跡を行った。
主要エンドポイントは1か月以内の心臓死、再梗塞、心室不整脈、心房細動。
結果、EPA投与は1か月以内の主要エンドポイントを著明に低下させた。特に心室不整脈で著明に低下した(7 vs 20.6 p=0.03)。EPA群におけるPCI後のpeak CRPはコントロール群と比べて低下(8.2(5.6-10.2)㎎/dl vs 9.7(7.6-13.9)mg/dl)。
以上から、AMI患者へPCI後早期にEPA投与させることは、心室不整脈を減少させ、CRP値を低下させることが分かった。

平成27年01月06日(担当:兼光)

CPAP, Weight Loss, or Both forObstructive Sleep Apnea
N Engl J Med 2014;370:2265-75.
肥満と閉寒型睡眠時無呼吸症候群は共存し、ともに炎症、インスリン抵抗性、脂質代謝異常、高血圧と関連している。 しかし、それらの因果関係ははっきりしていない。

【方法】181人の中等度から重度の閉寒型睡眠時無呼吸症候群を合併しているCRP1.0㎎/L以上の肥満患者。
ランダムにCPAP群、減量群、CPAP+減量群に割り付け、24週間観察。
CPAP+減量群に付加的効果があるかをCRPレベル、インスリン感受性、脂質、血圧について検討。

【結果】
CPAP+減量群:CRP、インスリン抵抗性、中性脂肪、血圧で低下。
CPAP群:血圧のみ低下。
減量群:CRP:インスリン抵抗性、中性脂肪、血圧で低下。
CPAP+減量群 vs.CPAP群;減量群:CRPに差なし。
CPAP+減量群 vs.CPAP群:インスリン抵抗性、中性脂肪で差あり。
CPAP+減量群 vs. 減量群:インスリン抵抗性、中性脂肪に差なし。
条件を満たした90人について検討すると、CPAP+減量群は単独群に比して、収縮期血圧と平均血圧の低下に差があった。

【結論】
CRPについては、CPAP+減量群は単独群と比して、付加的減少効果は認めず。
インスリン抵抗性や中性脂肪値については、減量はCPAPと組み合わせることで付加的効果を示す。
減量やCPAPのアドヒーランスは、単独群に比してより血圧を低下させる可能性がある。