循環器内科
循環器内科・心臓外科合同抄読会 平成26年7月
- 平成26年7月30日(担当:菅野)
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Association of Nut Consumption with Total and Cause-Specific Mortality.
N Engl J Med 2013;369:2001-11.
<背景>ナッツの摂取が多いほど、心血管疾患や2型糖尿病などの、主要な慢性疾患のリスクは低くなる。しかし、ナッツの摂取と死亡との関連は明らかにされていない。
<方法>看護師健康調査の女性 76,464 人と、医療従事者追跡調査の男性 42,498 人を対象として、ナッツの摂取とその後の全死亡および死因別死亡との関連を調査した。
<結果>まず、ナッツ摂取を全くしない群、少なくとも週1回、週1回、週2-4回、週5-6回、週7回以上の群に分けた。1回のナッツは28gとした。3,038,853人年の追跡において、女性16,200人、男性11,229人が死亡した。他の既知の危険因子、または疑われる危険因子について補正後、男女両方においてナッツの摂取と全死亡とのあいだに負の相関関係があることが認められた。プール解析によるナッツを摂取した参加者における摂取しなかった参加者と比較した死亡の多変量ハザード比は、年齢・人種・BMI・身体活動・喫煙を考慮して分析しても、摂取が週1回未満で0.93(95%信頼区間[CI] 0.90~0.96)、週1回で 0.89(95% CI 0.86~0.93)、週2~4回で0.87(95% CI 0.83~0.90)、週5回または6回で0.85(95% CI 0.79~0.91)、週7回以上で0.80(95% CI 0.73~0.86)であった(傾向性のP<0.001)。また、男女ともに同じようなパターンを示した。また、癌、心血管疾患、呼吸器疾患による死亡とのあいだにも有意な負の相関関係が認められた。
<結論>看護師、およびその他の医療従事者から成る独立した2つの大規模コホートにおいて、ナッツ摂取の頻度に死亡のその他の予測因子とは独立して、全死亡および死因別死亡との負の相関関係が認められた。 - 平成26年7月23日(担当:兼光)
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Atrial Fibrillation in Patients with Cryptogenic Stroke N Engl J Med. 2014 Jun 26;370(26):2467-77.
<背景>心房細動は脳卒中再発の主要な予防可能な原因であるため、早期発見、治療が重要である。しかし、発作性心房細動は虚血性脳卒中やTIA患者の一般的対応では、多くの場合に検出されず、治療も行われない。
<方法>55歳以上で、6ヶ月以内に発症した原因不明の虚血性脳卒中、TIA患者572人を対象として、無作為に30日間のイベント記録型心電図モニター装着群(介入群)と24時間心電図モニター群(対照群)に割り付けた。
主要転帰は割り付け後90日以内に新たに検出した30秒以上持続する心房細動とした。二次転帰は2.5分以上持続する心房細動のエピソード発生と90日後における抗凝固薬の使用状況とした。
<結果>
1)30秒以上持続するAfの検出 45/280(16.1%)vs. 9/277(3.2%)
2)2.5分以上持続するAfの検出 28/284(9.9%)vs. 7/277(2.5%)
3)(発症後)90日までに経口抗凝固薬を処方された患者数52/280(18.6%) vs. 31/279(11.1%)
<結論>55歳以上の最近起こった原因不明の脳卒中、TIA患者には発作性心房細動がよく起こっていた。30日間の非侵襲的自由行動下心電図モニターは、通常診療における短期間の心電図モニターと比較すると、心房細動の検出率を5倍以上に改善し、抗凝固療法の実施率をほぼ2倍にした。 - 平成26年7月16日(担当:國友)
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Association between prophylactic implantable cardioverter-defibrillators and survival in patients with left ventricular ejection fraction between 30% and 35%.
JAMA 2014; 311: 2209-2215
<背景>左室駆出率(EF)の低下した心不全患者では突然死が問題となる。多くの無作為臨床試験において、心不全入院患者に対する植込み型除細動器(ICD)の予防的移植の有用性が示されてきており、2013年のACC/AHAガイドラインにおいてもICD移植が推奨されている。しかし、多くの無作為臨床試験がEF35%以下を対象にしているにもかかわらず、実際解析した患者のEF中央値は30%よりも低く、EFが30~35%の患者における有用性は不透明である。
<目的>現在、米国ではEFが30~35%の心不全患者に対しICDの予防的移植が多く施行されており、その妥当性について検証する。
<方法>National Cardiovascular Data Registry(NCDR)のICD移植を受けた患者と、Get With The Guidelines-Heart Failure(GWTG-HF)データベースに登録されたICD移植を受けなかった患者を、後ろ向きコホート研究デザインで予後の比較を行った。対象はEF30~35%とし、EF30%未満の患者についても同様に解析を行った。背景因子の違いは、Rosenbaum and Rubin法にてマッチングさせ、解析を行った。
<結果>EF30-35%のマッチング患者数は、ICD移植群が408例、ICD非移植群が408例であった。3年死亡率はICD移植群が47.1%、ICD非移植群が58.0%で、ハザード比は0.83(0.69-0.99)と、ICD移植により死亡率の有意な改善が認められた。EF 30%未満のマッチング患者数は、ICD移植群が1,088例、ICD非移植群が1,088例であった。3年死亡率はICD移植群が46.1%、ICD非移植群が57.0%で、ハザード比は0.72(0.65-0.81)と、これもICD移植により死亡率の有意な改善が認められた。ICD移植群ではEFによる死亡率の差は認められなかった。
<結論>EFが30~35%の心不全患者もEF30%未満の患者同様に、ICD移植によって予後が有意に改善された。ガイドラインにおけるEF30~35%の心不全患者へのICD移植は妥当性がある。 - 平成26年7月9日(担当:吉永)
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Surgery for infective endocarditis complicated by cerebral embolism: A consecutive series of 375 patients J Thorac Cardiovasc Surg. 2014 Jun;147(6):1837-44. doi:
10.1016/j.jtcvs.2013.10.076.
脳塞栓を合併した感染性心内膜炎(IE)患者375例に対する手術について検証した試験。
IEのため準緊急もしくは緊急手術を受けた患者で、無症候性の脳塞栓、症候性の脳塞栓がそれぞれ予後にどのように影響するか検証するのが目的。
結果は、無症候性の脳塞栓もしくはTIAの患者が135例、症候性の脳塞栓の患者は240例であった。無症候性脳塞栓の患者で、大動脈弁位のIEの割合は37%、僧帽弁位のIEの割合は34%と同等であった。無症候性の患者と症候性の患者を比較すると、無症候性患者18例、症候性患者12例が、術後に不全片麻痺になった。無症候性患者3例、症候性患者4例が、術後に重症の脳出血を合併した。
病院死亡は、無症候性が21.4%、症候性が19.6%と有意差なく、5年生存率も、10年生存率も、無症候性と症候性で有意差は認められなかった。死亡の独立危険因子は、手術時の年齢、COPD、術前にカテコラミン投与を必要としたもの、透析、人工心肺時間であった。無症候性脳塞栓も症候性脳塞栓と同様にIEの術後生存を減少させるという報告であった。 - 平成26年07月02日(担当:武田)
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Anti-PCSK9 Antibody Effectively Lowers
Cholesterol in Patients With Statin Intolerance The GAUSS-2 Randomized, Placebo-Controlled Phase 3 Clinical Trial of Evolocumab
J Am Coll Cardiol 2014;63:2541-8
<目的>筋肉痛などの副作用でスタチン内服が困難な高脂血症患者に対し、PCSK9のモノクローナル抗体であるevolocumabの皮下注投与の有効性と安全性を、エゼチミブ内服治療と比較した。
<背景と方法>スタチン投与患者の10-20%に筋肉痛などの副作用が生じると報告されている。そのような患者群に対し、ヒトproprotein convertase subtilisin/kexin type 9 (PCSK9)に対するモノクローナル抗体であるevolocumabの投与は、副作用が少なく、著明にLDLコレステロールを低下させることがこれまで報告されている。
本GAUSS-2試験は、evolocumab投与群(140mg/2週ごと皮下注、もしくは420mg/月1回皮下注。それぞれエゼチミブのプラセボ毎日内服)と、エゼチミブ投与群(10mg/日内服とプラセボ2週ごと皮下注、もしくは10mg/日内服とプラセボ月1回皮下注)を4群にランダムに割付け、LDLコレステロール値の変化を一時エンドポイントとした、ランダム化二重盲検試験である。
<結果>307例の患者を4群に割り付けた。Evolocumab投与群ではLDLコレステロールは53~56%低下し、エゼチミブ投与群では16~19%の低下であった。Evolocumab投与群はエゼチミブ投与群と比し、37~39%、さらにLDLコレステロールを低下させた(P<0.001)。筋肉痛などの副作用に関しては両軍で差を認めなかった。
<結論>Evolocumabの投与は、今まで必要とされながらも副作用のためスタチン内服が困難であったハイリスク高脂血症症例において、有効かつ安全に使用できる。