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循環器内科

循環器内科・心臓外科合同抄読会 平成26年5月

平成26年05月28日(担当:高田)

Long-term outcomes and cardiac surgery in critically ill patients with infective endocarditis
European Heart Journal (2014) 35, 1195–1204
<目的>左心系の感染性心内膜炎(IE)の長期予後と手術成績を調査すること。
<方法と結果>2007年4月1日から2008年10月1日までに、フランスの33のICUに入院した198のIE患者のうち、69%にあたる137人が中央値59.5ヶ月の観察期間中に死亡した。死亡と関連した因子は、入院時のSOFA score (Sepsis-related Organ-Failure Assessment score)、人工弁のIE、vegetation size>=15mm、そして手術の有無であった。52%にあたる103人が中央値6日後に手術を受けていた。手術を受けることへの独立規定因子は、年齢60以下、心不全、心源性ショック、septicショック、免疫力低下、そしてICUに入る前か入室後24時間以内での早期診断であった。手術時に計算されたSOFA scoreのみが長期予後と相関がみとめられた。手術の時期は、手術後のout comeと関連がみとめられなかった。158人に理屈上手術のindicationがあったが、このうち手術されなかった58人の死亡率は95%であった。
<結論>重症IEの予後は依然として不良である。死亡と関連していたのは、多臓器不全、人工弁のIE、vegetationのサイズ、そして手術であった。手術適応である患者のうち1/3が手術を受けておらず、これらの患者では高い死亡率であった。手術時の多臓器不全が手術後の予後予測因子であったが、手術までの期間は予測因子とならなかった。

平成26年05月21日(担当:大槻)

Anticoagulation and survival in Pulmonary Artery Hypertension Result from the Comparative, Prospective Registry of Newly Initiated Therapies for Pulmonary Hypertension (COMPERA)
Circulation.2014;129:57-65
<背景>約30年間、抗凝固療法は特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)治療に推奨されてきた。しかし、これを支持するエビデンスは限られている。現在においてもIPAH患者に抗凝固療法をすべきかどうか不明瞭であり、また、他の肺動脈性肺高血圧症(PAH)に抗凝固療法を拡大させるかどうかも不明瞭なままである。
<方法・結果>COMPERAを分析して、IPAH患者と他のPAH患者を抗凝固療法で比較した。新規にPAHと診断された1283症例をサンプリングした。抗凝固療法はIPAH患者800人の66%に、ほかのPAH患者483人の43%に用いられた。
IPAHにおいては、未抗凝固療法群に比べて、抗凝固療法群は病態がより重篤であったにもかかわらず3年生存率は有意であった。3年生存率の差異は、336人のIPAH患者におけるマッチドペア分析で統計学的に有意(P=0.017)であった。IPAH患者生存率の抗凝固療法導入による有用性は多変量マックス回帰分析で確証された。(危険率0.75、95%信頼区間0.66-0.94)一方で、他のPAH患者に抗凝固療法導入することによる有用性は認められなかった。
<結論>抗凝固療法はIPAH患者の生存率を改善させ、現在推奨されている治療法を支持する結果であった。他のPAHに対しては結論がでなかった。

平成26年05月07日(担当:上小牧)

Spironolactone for Heart Failure with Preserved Ejection Fraction
N Engl J Med 2014; 370:1383-1392April 10, 2014 DOI: 10.1056/NEJMoa1313731
LVEF40%以下の心不全患者に対する内科的治療の有用性は確立されているが、LVEFの維持された心不全患者に対する効果は実証されていない。小さな機構研究では鉱質コルチコイド受容体阻害剤がLVEFの維持された心不全患者の拡張能を改善したという報告があるが、臨床結果に対する効果は厳密には試験されていない。そのためTreatment of Preserved Cardiac Function Heart Failure with an Aldosterone Antagonist(TOPCAT)trialが以下の要領で行われた。
3445名のLVEF45%以上に維持された症候性心不全患者を登録し、スピロノラクトン(15~45mg/日)と偽薬のいずれかを内服させ、心血管死、心停止蘇生、心不全による入院を主要評価項目とした無作為二重盲検試験を行った。平均追跡期間は3.3年、主要評価項目(心血管死、心停止蘇生、心不全での入院)発生率はスピロノラクトン群18.6%、プラセボ群20.4%だったが(ハザード比0.89、P=0.14)、有意に低下したのは心不全による入院発生率(ハザード比0.83、P=0.04)のみだった。
以上より、LVEFの維持された心不全患者においては、スピロノラクトンは心血管死、心停止蘇生、心不全による入院を主要評価項目とした有害事象を減少させなかったと結論された。