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循環器内科

循環器内科・心臓外科合同抄読会 平成26年4月

平成26年04月30日(担当:菅野)

Comparison of Dopamine and Norepinephrine in the Treatment of Shock
N Engl J Med 2010;362:779-89.
ドパミンとノルエピネフリンでは、ショック治療における第一選択の昇圧薬としてどちらに優位性があるかの検討。2003年12月19日から2007年10月6日までの間に多施設共同無作為化試験において、ショック状態の患者を、血圧の回復と維持のための第一選択の昇圧薬として、ドパミンを投与する群とノルエピネフリンを投与する群のいずれかに割り付けた。主要転帰は無作為化後28日の死亡率とした。ショックに対し、第一選択の昇圧薬としてドパミンを投与した患者とノルエピネフリンを投与した患者とで、死亡率に有意差はみられなかったが、ドパミン投与には不整脈の増加との関連が認められた。また、心原性ショックはドパミン投与群で多いという結果が得られた。

平成26年04月23日(担当:田川)

Effectiveness of combination therapy with statin and another lipid-modifying
agent compared with intensified statin monotherapy: a systematic review
Annals of Internal Medicine 2014; 160(7): 468-476.
高強度のスタチンと、スタチン強度を下げて他の脂質降下剤を用いた多剤併用療法の効果を比較するシステマティックレビュー。
<背景>AHAガイドラインでは、以前アテローム性動脈硬化症に対してファーストラインは高強度スタチンであったが、横紋筋融解症など、副作用も増えたのが問題となった。結果2013年AHAガイドラインでは、適度な併用療法を推奨したが、併用療法を支持するデータがなかった。そのため、システマティックレビューを行い、併用療法とスタチン単独療法によるリスクとベネフィットの比較をした。
<目的>アテローム性動脈硬化症の成人に対して、高強度スタチン製剤と低強度スタチン+多剤併用療法の臨床的効果を比較する。
<結果>36のトライアルが含まれた。ハイリスクな高脂血症患者に対して、低強度スタチンと胆汁封鎖薬(陰イオン交換樹脂)の併用療法は、中強度スタチン単独療法よりもLDL-cholを14%程多く減少させた。また、アテローム性動脈硬化症と糖尿病の患者さんそれぞれに対して、中強度スタチンとエゼチミブの併用療法は、高強度スタチン製剤単独療法よりも、5-15%また、3-21%程減少させた。
<結論>スタチンに反応が悪い患者に対して、スタチンの強度を増すのではなく、低強度のスタチンと(胆汁封鎖薬やエゼチミブ)多剤併用療法を考慮していくことが望ましい。しかし、今回の多くの試験は短期間なので、今後長期間での試験が求められる。

平成26年04月16日(担当:兼光)

A Controlled Trial of Renal Denervation for Resistant Hypertension
N Engl J Med 2014; 370:1393-1401
<背景>これまでの非盲検試験では、カテーテル腎動脈除神経術は治療抵抗性高血圧患者の血圧を下げることが示唆されていた。
<方法>前向き単盲検無作為化シャム対照試験を行った。重症治療抵抗性高血圧患者を2:1の割合で、腎動脈除神経群(RD群)、腎動脈造影群(RA群)に割り付けた。患者は、無作為化以前に利尿薬を含む、少なくとも三種類の降圧薬を投与されていた(最大耐容量投与あり)。主要有効性エンドポイントは6ヶ月後の診察室血圧(OBP)での収縮期血圧の変化、副次有効性エンドポイントは24時間血圧測定(ABPM)における収縮期血圧の変化とした。主要安全性エンドポイントは一ヶ月後の死亡、末期腎臓病、標的臓器障害を生じた塞栓イベント、腎血管性合併症、高血圧クリーゼの発生と6ヶ月後の70%以上の新規腎動脈狭窄の発生とした。
<結果>535人の患者をランダム化。
#1 6ヶ月後のOBPの変化
RD群:-14.13+-23.93 mmHg
RA群:-11.74+-25.94 mmHg
いずれもベースラインに比して有意に低下した。両群間で-2.39 mmHgの差を認めたが有意ではなかった。
#2 6か月後のABPMの変化
RD群: -6.75+-15.11 mmHg
RA群: -4.79+-17.25 mmHg
両群間で-1.96 mmHgの差を認めたが有意でなかった。
主要安全性エンドポイントはRD群、RA群で有意差はなかった。
<結果>この試験では、RD群はRA群に比して有意な6か月後収縮期血圧の低下を示さなかった。

平成26年4月9日(担当:國友)

Should surgical ablation for atrial fibrillation be performed in patients with a significantly enlarged left atrium?
J Thorac Cardiovasc Surg. 2014; 147: 236-241
<背景・目的>心房細動に対する外科的アブレーションでは、左房サイズが大きい場合は成功率が低いとされ敬遠されがちであるが、サイズと成功率についての明確な指標を示したデータはない。左房サイズを含めCox-Maze手術の成否を左右する因子を検討する。
<方法>左房縫縮を行わずに外科的アブレーションを施行した373例が対象。左房径5.5cm以下のsmall LA群と5.5cmを超えるlarge LA群の2群に分け、1年後および2年後におけるAF再発について解析した。左房径とAF再発との単変量解析、および左房径を含むその他の因子(年齢、性別、DM、EF、PVD、HT、Euroscore、心房細動期間、Cryoか高周波か、full Mazeか否か、同時手術手技数)とAF再発との多変量解析を行った。
<結果>small LA群とlarge LA群において遠隔期のワーファリン使用率および脳塞栓症発生率に差はなかった。単変量解析では左房径サイズの増大に伴いAF再発率は有意に増加した(OR1.43、左房径1cm増大あたり)が、多変量解析では左房サイズはAF再発の予測因子とはならず、心房細動期間と同時手術手技数のみが予測因子となった。
<結論>心房細動に対する外科的アブレーションの適応を考える際に、左房サイズが大きいからといって回避する理由にはならないであろう。

平成26年4月2日(担当:吉永)

Myocardial damage influences short- and mid-term survival after valve surgery: A prospective multicenter study
J Thorac Cardiovasc Surg. 2013 Nov 27. pii: S0022-5223(13)01291-9. doi: 10.1016/j.jtcvs.2013.10.061.
単独大動脈弁手術(AVS)、または、単独僧帽弁手術(MVS)を受けた患者の心筋ダメージが、死亡率や合併症にどう影響しているのか検証した試験。Primary endpointは入院死亡。Secondary endpointは術後の合併症と術後3か月以内の死亡。
AVS、または、MVSを受けた患者のトロポニンIを術直後と手術翌日の朝に測定。トロポニンIのピーク値をパーセンタイルでランク付けして解析。
結果は、患者数は965人。年齢は67±12歳、45.5%が女性。AVSを受けた患者は579人。MVSを受けた患者は386人。トロポニンIのピーク値はMVS群がAVS群より優位に高かった。トロポニンIのピーク値は、両群間で、死亡者が生存者より優位に高かった。
活動期の感染性心内膜炎、NYHA3-4、EF30%以下、人工心肺時間が病院死亡と関連があった。さらにトロポニンIが高い群ほど、その関連が明確になった。トロポニンIの上昇は、術後死亡と合併症の独立危険因子であった。