循環器内科
循環器内科・心臓外科合同抄読会 平成26年1月
- 平成26年1月29日(担当:塙)
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Intra-aortic balloon counterpulsation in acute myocardial
infarction complicated by cardiogenic shock (IABP-SHOCK II):
fi nal 12 month results of a randomised, open-label trial
Lancet 2013;382:1638–45
<背景>最新の国際ガイドラインでは、レジストリデータに基づき心原性ショックを伴う急性心筋梗塞へのIABPの推奨ランクは引き下げられている。すでに最大のtrialであるIABP-SHOCK IIの結果として、心原性ショックを伴う急性心筋梗塞にはIABPによる30日死亡率の低下が認められないことが示されていた。しかし心原性ショックの先行研究において、延長フォローアップにおいてのみ死亡率改善の効果が示されたことがあり、著者らは本試験についても6、12ヵ月の評価を行った。
<方法>IABP-SHOCK2 trialは無作為オープンラベル多施設で行われた。心原性ショックの合併症を有する急性心筋梗塞患者で早期血行再建術と適切な薬物療法が予定されている患者を、中央のweb systemを通して、無作為に、IABP使用群と(301例)、対照群(299例)にわけた。治療効果に関する主要エンドポイントは30日全死因死亡率だったが、加えて、6ヵ月後、12ヵ月後フォローアップを行い、生存者のQOLについてEuroqol-5D質問票を用いて評価した。ブラインドされた中央委員会が臨床的転帰を判定した。患者や担当医師は割り当てをブラインドされなかった。解析はintention to treatで行われた。
<結果>2009年6月16日~2012年3月3日の間に、600人の患者がIABP群(n=301),コントロール群(n=299)に分けられた。
12ヵ月の追跡を完了した595例(99%)のうち、死亡はIABP群52%(155例)、対照群51%(152例)で、両群に有意差はなかった(相対リスク比[RR]:1.01、95%信頼区間[CI]:0.86~1.18、p=0.91)。
再梗塞(RR:2.60、95%CI:0.95~7.10、p=0.05)、血行再建術(同:0.91、0.58~1.41、p=0.77)、脳卒中(同:1.50、0.25~8.84、p=1.00)のいずれについても、両群間に有意な差はなかった。
また、生存者に対して行われた、運動能、セルフケア、日常の活動度、痛み・苦痛、不安またはうつ症状などを含むQOL評価も両群で有意差はなかった。
<結論>心原性ショックを伴う心筋梗塞で早期の血行再建を行った患者では、IABPは12ヵ月の全死亡を減少させなかった。 - 平成26年1月22日(担当:上小牧)
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A randomized trial to assess catheter ablation versus rate control in the management of persistent atrial fibrillation in heart failure.
J Am Coll Cardiol. 2013 May 7;61(18):1894-903.
Afを合併した心不全に対するアブレーションの効果は不明であった。この論文では、NYHA-IIIの心不全を合併したAf患者をアブレーション群とrate control群にランダムに振り分け、治療施行または開始後12ヶ月間の最大酸素消費量、ミネスタスコア、BNP、6分間歩行距離、LVEFを比較したものである。
主要評価項目の最大酸素消費量は、3ヶ月後ではその差は明らかではなかったが、12ヶ月後ではレートコントロール群と比較し、アブレーション群では有意に改善した(改善度+3.07ml/kg/min, 95%信頼区間[95%CI]: 0.56-5.59、P=0.018)。副次評価項目はアブレーション群ではミネソタスコア(P=0.019)、BNP(P=0.045)は有意に改善し、6分間歩行(P=0.095)、EF(P=0.055)にも改善の傾向がみられた。以上よりAf合併心不全に対するアブレーションとレートコントロールの運動耐容能に対する効果の比較試験では、アブレーション群で運動耐容能、自覚症状、神経体液因子を有意に改善したことが示された。 - 平成26年1月15日(担当:菅野)
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The Clinical Outcomes of Percutaneous Coronary Intervention Performed Without Pre-Procedural Aspirin
Journal of the American College of Cardiology Vol.62,No.22,2013:2083–9
アスピリンの前投与を受けずに実施されたPCIの割合および転帰を検討。2010年1月から2011年12月にかけてミシガン州の44病院で施行されたPCIのうち、アスピリン前投与が行われずにPCIを施行した件数と患者転帰を、傾向スコアマッチングによる多変量解析を用いて検討した。
エンドポイントは院内死亡と輸血が必要になった時とした。結果は、本研究の対象者65,175名のうち7.1%にあたる4,640名がPCIを施行する前の24時間以内にアスピリン前投与なしでPCIを受けていた。傾向スコアマッチングによる解析で、2群を比較したところ、前投与のない群は死亡、脳卒中が有意に多いという結果が出た。一方、輸血の必要性に関しては有意な差はなかった。この研究結果は、PCI前にアスピリンの使用をすることに焦点を当て、その必要性を支持するものであった。 - 平成26年1月8日(担当:田川)
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Novel Criteria of Urine Osmolality Effectively Predict Response to
Tolvaptan in Decompensated Heart Failure Patients
Circ J 2013; 77: 397-404
尿浸透圧は、非代償性心不全患者のトルバプタンに対する反応性を効果的に予知する
<背景>バソプレシン2受容体のアンタゴニストであるtolvaptanは利尿薬としては独特な特性を持つが、この薬に対する反応性は予知できない。
<方法>対象は、非代償性うっ血性心不全での61人でTLV投与量は1日3.75−15mgの患者。期間は2011年2月から2012年1月の東大病院。
すべての患者はNYHAIII以上で、ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬投与していても脚の浮腫、肺水腫と頸静脈怒張を認める人たち。除外したものとして、IABP,人口呼吸器装着、補助人工心臓が使われている症例、循環血液量が少ないと予想される者、弁の狭小化を認めるもの、30日以内の急性冠症候群、明らかな感染症のあるものと、透析をしているものとした。TLV投与量はこのstudyの期間中変更しなかった。
まず、TLV投与前に尿浸透圧を測定し、TLV投与後4−6時間で再度尿浸透圧を測定し、baseの浸透圧からの減量率で計算。TLVのresponderとnon-responderはTLV投与後24時間後の尿量の増加を認めるものをresponderと定義する。END pointは低Na、循環血液量減少性ショックとした。
心不全症状スコアは①下腿浮腫②肺水腫③頸静脈怒張④呼吸困難⑤NYHA分類でスコアをつけた。このスコアはTLV投与前の、投与後1週間で評価した。
<結果>ロジスティック解析が行われ、TLV反応性の独立した予知因子が2つ、有意差が認められた。1つはTLV投与前の尿浸透圧であり、352mOSM/L以上であること、もう一つは尿浸透圧の減少具合であり、特にTLV投与後の4−6時間での尿浸透圧減少率26%以上がTLV responderの予知因子となった。Non-responderの尿の希釈力やGFRは低い結果となった。