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循環器内科

循環器内科・心臓外科合同抄読会 平成25年12月

平成25年12月11日(担当:兼光)

Cardiac-Resynchronization Therapy in Heart Failure with a Narrow QRS Complex (N Engl J Med 2013; 369:1395-1405)
現在のガイドラインでは、CRTは洞調律、内科的治療抵抗性、低LVEF、QRS間隔大である患者に適応があるとされている。QRS間隔が広くない心不全患者にCRTは有益かどうか検討した多施設ランダム試験。対象はNYHA分類III/IV度で、ICDの適応がある収縮性心不全例。CRT群で死亡例が有意に増加したため研究は中断した。

心不全入院 対照群 22.2 CRT群 24.5 (P0.25)
死亡 対照群 6.4 CRT群 11.1 (P0.02)
心血管イベントによる死亡 対照群 4.2 CRT群 9.2 (P0.004)
心不全死 対照群 2.5 CRT群 4.2 (P0.15)
デバイス関連イベント件数 対照群 93 CRT群 50 (P0.01)

今回の研究では、CRT群の方にデバイス関連合併症(特にリード関連)が多かった。
収縮性心不全でQRS間隔が130msec以下の患者には、CRTは死亡率や心不全入院を減らさなかった。CRTはこのような患者の死亡率を上げる可能性があると結論。

平成25年12月4日(担当:國友)

Association between early surgical intervention vs watchful waiting and outcomes for mitral regurgitation due to flail mitral valve leaflets.
JAMA 2013;310:609–16
<目的>ガイドライン上クラスIではない重度MRに対する治療については、早期手術か内科治療+経過観察を行うかは未だ定まっていない。多施設大規模解析により両者の長期遠隔成績の比較を行うことで治療方針を明確にする。
<方法>フランス(2施設)、イタリア(2施設)、ベルギー(1施設)、アメリカ(1施設、メイヨークリニック)の4か国でMR患者登録を行っているThe Mitral Regurgitation International Database (MIDA)を使用(平均観察期間は10.3年であり98%でフォローアップが達成されている)。1980-2004年までの連続2097例中1021例がガイドライン上クラスⅠではない重度MRであり、そのうち446例には診断後3カ月以内で手術が行われ、575例には内科治療+経過観察が行われたが、この長期遠隔成績を比較した(Overall解析, Propensity score-matched cohort解析, Inverse probability-weighted cohort解析)。
(アウトカム)
死亡、心不全、新たに発生したAf

<結果>
1) 早期手術群と経過観察群の背景因子には、年齢、併存合併疾患、愁訴、肺高血圧、クラスⅡ要因、左室拡張期径、左室収縮期径、左房径において差が認められた。
2) 早期手術群446例中93%に弁形成が可能であり、経過観察群575例中339例(59%)には中間値1.65年で手術が行われた(87%弁形成)。
3) 早期および長期成績は下記のとおり

早期
Overall:死亡率 早期手術群 経過観察群
3カ月 1.1% 0.5% p=0.28
Overall:心不全発生率 早期手術群 経過観察群
3カ月 0.9% 0.9% p=0.96
Overall:新Af発生率 早期手術群 経過観察群
3カ月 6.2% 1.2% p<0.001
長期
Overall:生存率 早期手術群 経過観察群
5年 95% 84%
10年 86% 69%
20年 63% 41% p<0.001
早期手術群で長期生存率が有意に良好となっており、これはPropensity score-matched cohort解析でも同様であった。
Overall:心不全発生率 早期手術群 経過観察群
10年 7% 23%
20年 10% 35% p<0.001
経過観察群で心不全発生率が有意に多くなっており、これはPropensity score-matched cohort解析でも同様であった。
Overall:新Af発生率
短期3か月では先に示した通り有意に早期手術群が多かったが、5、10、15、20年の長期では差がなかった。

Cox回帰分析では、Overall 解析、Propensity score-matched cohort解析、Inverse probability-weighted cohort解析、いずれも早期手術群が有意に長期生存に有効で、また、長期にわたり心不全発生を抑えることが示された。新たなAf発生に関しては、早期手術は影響を与えていない。

各期間(短期=3-12カ月、中期=1-5年、長期=5年以上)で人年法による死亡率を解析してみると、早期手術はいずれの期間でも相対リスクを有意に減らしており、長期では52.6%減少させていた。また、クラスIIを有するか否か、あるいは診断時に自覚症状があるか否かで同様に各期間での死亡率についてサブ解析を行ってみると、クラスIIのあるなしや、自覚症状のあるなしにかかわらず、早期手術によって中期および遠隔死亡のリスクを有意に減少させることが判明した。

<結論>ガイドライン上クラスIではない重度MRに対する早期手術群の長期成績(生存率および心不全回避率)は、Overall解析、Propensity score-matched cohort解析、Inverse probability-weighted cohort解析のいずれにおいても経過観察群よりも良好であった。ただし新たな心房細動発生には差がなかった。5年以上の長期遠隔死亡リスクは早期手術により52.6%減少しており、またサブ解析の結果からも、クラスI、クラスII、もしくは自覚症状が全く乏しい場合においても、重度MRに対しては早期手術を行うことは有用と思われる。