循環器内科
循環器内科・心臓外科合同抄読会 平成25年10月
- 平成25年10月25日(担当:柴)
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A Risk Score for Predicting Near-Term Incidence of Hypertension: The Framingham Heart Study.
Parikh et al. Ann Intern Med 2008;148:102-110
将来高血圧を発症するリスクの高い症例を層別化することで将来の心血管疾患発症を抑制し、医療費削減に結び付くと考えられている。本研究ではフラミンガム研究のコホートから20-69歳(女性54%)の高血圧のない1717名を対象にして日常臨床で得られる因子から高血圧発症を予測するリスクスコアの作成を検討した。中央値3.8年の追跡期間の間に796人が新規に高血圧を発症した。多変量解析によると年齢、性別、収縮期/拡張期血圧、BMI、両親の高血圧歴、喫煙が有意に高血圧発症と関連していた。このモデルによると4年後の高血圧発症リスクは、34%が低リスク(<5%)、19%が中等度リスク(5-10%)、47%が高リスク(<10%)と考えられた。c統計量は0.788と算出された。このモデルは白色人種以外や糖尿病合併症例に外挿できるかは今後の検討課題であるが、日常臨床で活用できるツールとして有用と思われる。 - 平成25年10月18日(担当:上小牧)
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Dabigatran versus Warfarin in Patients with Mechanical Heart Valves
N Engl J Med 2013 Sep 26;369(13):1206-14
人工弁置換術後の患者に対するダビガトランとワーファリンの血栓予防効果および出血性副作用の発生率を無作為化容量検証第2相試験にて比較した。252人の患者が登録された時点で、ダビガトラン群で血栓塞栓症と出血イベントが有意に高い発生率となり、試験が中止された。ダビガトランは人工弁という異物に接した際に血液凝固の活性化を抑制する能力がワーファリンと比較して低い可能性があると考えられた。 - 平成25年10月11日(担当:田川)
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心筋梗塞における予防的血管形成術の無作為化試験
Randomized Trial of Preventive Angioplasty in Myocardial Infarction
D.S. Wald and others
N Engl J Med 2013; 369 : 1115-23.
ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)において、梗塞責任冠動脈に対して経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を行うと予後が改善する。一方、狭窄度の大きな非梗塞病変に対する PCI(予防的 PCI)の有効性は明らかになっていない。2008~13年に、英国の5施設で梗塞病変にPCIを施行する急性STEMI患者465例(左脚ブロック3例を含む)を登録し、予防的PCIを施行する群(234例)と施行しない群(231例)に無作為に割り付けた。その後の狭心症に対するPCIは、虚血という他覚的根拠の認められる難治性狭心症にのみ施行した。主要転帰は、心血管系の原因による死亡、非致死的心筋梗塞、難治性狭心症である。データ安全性モニタリング委員会は、2013年1月までに有意な結果から判断し、試験の早期中止を勧告した。平均追跡期間23ヵ月で、主要転帰が発生したのは予防的PCI施行群21例、非施行群(梗塞病変にのみPCIを施行)53例であり、患者100例あたりに換算するとそれぞれ9件、23件であった(予防的PCI施行群のハザード比0.35,95%信頼区間[CI]0.21~0.58,P<0.001)。主要転帰3項目のハザード比は、心血管系の原因による死亡0.34(95%CI0.11~1.08)、 非致死的心筋梗塞0.32(95%CI0.13~0.75)、難治性狭心症0.35(95%CI0.18~0.69)であった。STEMIと多枝冠動脈疾患を有し梗塞病変にPCIを施行する患者において、狭窄度の大きな非梗塞病変に対する予防的PCIは、梗塞病変にのみPCIを施行した場合と比較して、心血管系有害事象の発生リスクを有意に低下させた。 - 平成25年10月9日(担当:國友)
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Association of warfarin therapy duration after bioprosthetic aortic valve replacement with risk of mortality, thromboembolic complications, and bleeding.
JAMA 2012; 308: 2118–25
<背景>生体弁は65歳以上の比較的高齢の患者に使用される機会が多い。そのような年齢層の患者では、弁置換後の血栓塞栓症のリスクと出血のリスクをバランス良く管理しワーファリンの投与期間を決める必要がある。生体弁を用いたAVRでは、現在種々のガイドラインにおいて3か月のワーファリン内服が推奨されているが、これはある1つの観察研究の結果(JACC,1995)に基づいており、エビデンスに乏しい可能性がある。
<目的>大規模解析により、生体弁を用いたAVR症例においてワーファリン使用期間と血栓塞栓症、出血、心血管死亡の関連を調べる。
<方法>デンマークNational Patient Registryから、1997(1月)~2009年(12月)に生体弁を用いたAVRを施行された4075例を対象。ワーファリンをある定められた期間(30~89日、90~179日、180~364日、365~729日、730日以上)使用した場合において、使用中止により脳卒中、血栓塞栓症、出血、心血管死亡の発生率を人年法にて解析。
<結果>30~90日での推定イベント発生 項目 ワーファリン(-) ワーファリン(+) 補正発生比 脳卒中 7.00/100人・年 2.69/100人・年 2.46 血栓塞栓症 13.07/100人・年 3.97/100人・年 2.93 出血 11.86/100人・年 4.10/100人・年 2.32 心血管死亡 31.74/100人・年 3.83/100人・年 7.61 90~179日での推定イベント発生 項目 ワーファリン(-) ワーファリン(+) 補正発生比 脳卒中 2.48/100人・年 2.46/100人・年 1.00 血栓塞栓症 5.04/100人・年 1.87/100人・年 2.65 出血 2.31/100人・年 3.23/100人・年 0.66 心血管死亡 6.50/100人・年 3.37/100人・年 3.51 <結論>生体弁AVRにおいて、3か月以内のワーファリン中止は、脳卒中、血栓塞栓症、出血、心血管死亡の発生率を著しく増加させており、6か月以内のワーファリン中止でも心血管死亡発生率は依然高い。ガイドライン上推奨される3か月に加えさらに3か月延長することが、心血管死亡発生を抑えかつ出血合併症を予防する上でも望ましいと思われる。