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循環器内科

循環器内科・心臓外科合同抄読会 平成24年10月

平成24年10月30日(担当:國友)

Early surgery versus conventional treatment for infective endocarditis.
N Eng J Med 2012;366:2466-73
感染性心内膜炎の外科治療の適応とタイミングについては、心不全を伴う場合や感染病巣の広がりによる組織破壊の進行が高度である場合は速やかな外科手術を行うことに異論はないが(クラスⅠ)、塞栓症を繰り返す場合や消失しない疣贅を有するものについての手術はACC-AHAガイドライン上クラスⅡaとされているものの、塞栓症を引き起こす可能性の高い大きな疣贅だけではクラスⅡbとされ特に2009年ESCガイドラインでは15mm以上でもクラスⅡbとなっている。
著者らは、10mm以上の大きな疣贅を有する76人の患者(左心系病変、弁病変重度、心不全や高度組織破壊病変を伴わないもの)をランダムに早期手術群と内科治療群に分け、エンドポイントを死亡、塞栓症イベント、IE再発にして1年経過観察した。早期手術群はランダム化後48時間以内に手術したが、内科治療群でも経過中30名(77%)に外科手術が必要となった。6週での死亡は早期手術1、内科治療1と差はなかったが、塞栓症イベント(8:0)や死亡+塞栓症イベントの複合エンドポイント(9:1)において早期手術群の予後が有意に良かった。この傾向は6か月時点でも同様であった(8:0、11:1)。結論として、10mm以上の大きな疣贅を有する感染性心内膜炎患者では、塞栓症予防に早期手術の方が内科治療より有用である。

平成24年10月16日(担当:上小牧)

Risk of pneumonia associated with use of angiotensin converting enzyme inhibitors and angiotensin receptor blockers: systematic review and meta-analysis
BMJ. 2012; 345: e4260. Published online 2012 July 11. doi: 10.1136/bmj.e4260
PubMed、Web of science with conference proceedings、FDA websiteのデータベースから、ACE阻害薬およびARBと肺炎リスクの関連を検討した論文や、文書を抽出し、37件の報告を解析対象した、無作為比 較試験およびコホート研究。
ACE阻害薬群は,対照群およびARB群と比べ,肺炎リスクがそれぞれ34%,31%低かった。脳卒中患者ではACE阻害薬群のリスクがほぼ半減。アジア人は非アジア人と比較し、大きなリスク低下がみられた。肺炎関連死のリスクはACE阻害薬群、ARB群のいずれにおいても少し減少していた。両者の肺炎治療の内容に差はなかった。
以上より著者は、肺炎の危険性を減少させると考えられるのはARBではなくACE阻害薬であり、特に脳卒中既往者とアジア人は空咳のような許容できる有害事象が発生しても、ACE阻害薬の服用中止を勧めない方が良いと結論づけた。

平成24年10月9日(担当:吉永)

What makes the difference between the natural course of a remaining type B dissection after type A repair and primary type B aortic dissection?
Eur J Cardiothorac Surg 2012;41:e110-116.
急性A型解離術後に残存するB型解離を有する患者247例と急性B型解離の患者112例の慢性期における危険因子、結果、外科的介入(胸腹部置換、TEAVR)の必要性について比較、検証した試験:A型解離術後に残存するB型解離の患者では、エントリー開存群が閉塞群より外科的介入の回避率が有意に低く、エントリーの開存は慢性期の外科的介入の予測因子になり得ると指摘されています。
急性B型解離の患者では、エントリー開存群と閉塞群の外科的介入の回避率に有意差はなく、5年後には両群とも50%以上の患者が外 科的介入を要しました。また、偽腔の閉塞状態は、A型解離術後のB型解離と急性B型解離の慢性期の外科的介入の予測因子にはならないとの結果でした。

平成24年10月2日(担当:武田)

Comparative outcomes for patients who do and do not undergo percutaneous
coronary intervention for stable coronary artery disease in New York.
Circulation. 2012 Apr 17;125(15):1870-9. Epub 2012 Mar 22.
COURAGE研究(New Engl J Med 2007)では、安定狭心症患者をランダムに至適薬物療法群(OMT群)とOMTに加えPCI治療を施行した群に分けたところ、予後に有意差を認めなかった。
本論文では、ニューヨーク州で過去に冠動脈造影を施行された安定狭心症患者のうち、通常薬物療法群(RMT群)とRMTに加えPCIを施行した群(RMT/PCI群)両群の年齢、性別、リスクファクターなど20項目を合致させた各933例の4年の予後を調査した。結果、死亡率、心筋梗塞発症率、血行再建術施行率全てにおいて、RMT/PCI群の予後が良好であった。通常診療レベルの薬物療法であるRMT下では、PCIにより血行再建を行った方が予後が良い可能性が示された。