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循環器内科

循環器内科・心臓外科合同抄読会 平成27年11月

平成27年11月24日(担当:柘植)

High-Flow Nasal Oxygen vs Noninvasive Positive Airway Pressure in Hypoxemic
Patients After Cardiothoracic Surgery A Randomized Clinical Trial
JAMA. 2015;313(23):2331-2339. doi:10.1001/jama.2015.5213.

【背景】
心臓胸部外科領域の手術後に急性呼吸不全となって低酸素血症を呈する患者には、再挿管防止に非侵襲的な換気が行われる。最近、忍容性が高く、適用が簡単なネーザルハイフローが用いられる頻度が上昇している。

【目的】
従来の間欠的BiPAP療法と、ネーザルハイフローの有効性を比較検討。

【方法】
フランス国内のICU6施設で、心臓胸部外科手術を受けた患者で、急性呼吸不全を発症した、あるいは発症リスクが高い830人を登録し、ネーザルハイフロー群(414人)と間欠的BiPAP群(416人)にランダムに割り付けた。ネーザルハイフロー群には、酸素をflow 50L/ 分で継続的に投与。間欠的BiPAP群にはPS 8cmH2O、PEEP 4cmH2Oによる酸素投与を1日4時間以上実施。FiO2は、両群とも50%で開始し、酸素化の目標を達成するまで調整し、治療を継続した。
主要評価項目は、治療の失敗(再挿管、割り付け以外の酸素投与法への変更、患者訴えによる治療の中止、胃拡張などの有害事象による治療中止) に設定。
副次的評価項目はICU入院中の死亡率や呼吸変数の変化などとして、intention-to-treat分析した。

【結果】
治療失敗率はネーザルハイフロー群で21.0%、間欠的BiPAP群では21.9%で、ネーザルハイフロー療法は間欠的BiPAP療法に対して非劣性であるという結果だった。
ICU死亡率は、ネーザルハイフロー群が28人(6.8%)、間欠的BiPAP群は23人(5.5%)。絶対差は1.2ポイント(-2.3から4.8、P=0.66)で有意差は見られなかった。
酸素投与開始からの呼吸変数への影響は、動脈血酸素分圧(PaO2)/FiO2比は、開始後1時間の平均値、6-12時間後までの平均値のいずれも、BiPAP群で有意に高かった。開始後1時間の1分間の呼吸回数平均値は、ネーザルハイフロー群で有意に少なかった。その他の変数に対する治療の影響は、両群間でほぼ同等だった。

【結論】
心臓胸部外科手術後に急性呼吸不全を呈した患者や、呼吸不全リスクが高い患者に対するネーザルハイフロー療法は、治療失敗のリスクについて間欠的BiPAPに対して非劣性である。

平成27年11月17日(担当:高田)

A Leadless Intracardiac Transcatheter Pacing System

【背景】
リードレスペースメーカーはポケット及びリードを無くすために開発された。

【方法】
多施設前向きシングルアーム試験において、ガイドラインで心室ペーシングの適応のあった患者にカテーテルで心室内ペースメーカーを植え込んだ。主要評価項目の解析は、300人の患者が6か月follow upに達した段階で行った。Primary safety end pointは、システム及び手技による合併症のない状態とした。Primary efficacy end pointは、6か月の段階で閾値が2v以下か1.5v以上の上昇がない状態とした。End pointの評価は、過去のデータを参考にして、それぞれ、82%、80%以上かどうかというperformance goalで評価した。また、過去のペースメーカー植え込みに関する論文のうち2667人を対象として合併症の頻度を比較した。

【結果】
725人の対象患者のうち、719人にデバイスを植え込むことができた。カプランマイヤー法でPrimary safety end pointは96%であり、performance goalで評価すると有意に高かった。725人中の25人において28の合併症があったが、dislodgementsはなかった。6か月観察された297人中292人でPrimary efficacy end pointは98.3%であり、performance goalで評価すると有意に高かった。28の合併症があったが、コントロール群に比べると有意に低かった。

【結論】
過去の論文と比較した今回の試験では、カテーテルで留置するペースメーカーは、事前に設定した安全性と効果の双方をみたすことができ、経静脈的にペースメーカーと同様の閾値の安定性をみたすことができた。

平成27年11月10日(担当:鈴木)

Duration of Triple Therapy in Patients Requiring Oral Anticoagulation After Drug-Eluting Stent Implantation(The ISAR-TRIPLE Trial)
JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF CARDIOLOGY  VOL.65, NO.16, 2015

【背景】
心房細動や機械弁植込みなどのために経口抗凝固薬(OAC)を投与している患者に薬剤溶出性ステント(DES)を植込んだ場合、OACにアスピリンとクロピドグレルなどによる2剤併用抗血小板療法(DAPT)を加えた3剤併用療法が推奨されるが、至適治療期間は明らかでない。

【目的】
アスピリンとOACを服用中の患者において,DES植込み後の3剤併用療法におけるクロピドグレルの投与期間を6か月から6週間に短縮することで,正味の臨床転帰が改善するかを検討する。

【方法】
ヨーロッパの3施設(ドイツ2施設,デンマーク1施設)において、2008年9月から2013年12月にDES植え込み術を受けてアスピリンとOACを内服している患者を対象に行った。計614人の患者をクロピドグレルを6週間内服する群と、6か月内服する群とに無作為に割り付けてintention-to-treat解析による評価を行った。追跡期間は9カ月とし、一次エンドポイントは死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中、TIMI出血基準における大出血とする。

【結果】
一次エンドポイントの発生は6週間群で30例(9.8%)、6か月群で27例(8.8%)と両群に有意差を認めなかった(ハザード比1.14;95%信頼区間0.68~1.91;p=0.63)。心臓死、心筋梗塞、ステント血栓症、脳梗塞の複合エンドポイント(6週群12例[4.0%]vs 6か月群13例[4.3%]:ハザード比0.93;95%信頼区間0.43~2.05;p=0.87)、TIMI出血基準の大出血(6週群16例[5.3%]vs 6か月群12例[4.0%]:ハザード比1.35;95%信頼区間0.64~2.84;p=0.44)といった二次エンドポイントにおいても有意差は認められなかった。

【結論】
OACを投与しているDES植込み患者において,3剤併用療法の期間を6か月から6週間に短縮しても正味の臨床転帰は改善しなかった。これらの結果は、3剤併用療法の期間の選択には虚血と出血のリスクの検討がなされるべきであることを示唆している。