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循環器内科

循環器内科・心臓外科合同抄読会 平成27年

平成27年12月01日(担当:武田)
Everolimus-Eluting Bioresorbable Scaffolds for Coronary Artery Disease
N Engl J Med 2015; 373:1905-1915

【背景】
薬剤溶出性ステント留置を受ける冠疾患患者では、金属ステントが残存することにより有害事象を起こしている可能性がある。長期転帰を改善するため、生体吸収性スキャフォールド(Absorb)が開発された。

【方法】
大規模多施設共同無作為化試験で、安定または不安定狭心症の患者2008例を、エベロリムス溶出生体吸収性血管スキャフォールド(Absorb; 1322 例)の留置群と、エベロリムス溶出コバルトクロム合金ステント(Xience; 686 例)の留置群に2:1の割合で無作為に割り付けた。主要エンドポイントは、1年の時点での標的病変不全(心臓死・標的血管心筋梗塞・虚血に起因する標的病変の血行再建)とし、非劣性と優越性の両方について検討した。

【結果】
1年の時点での標的病変不全はAbsorb 群7.8%、Xience群の6.1%で発生し、非劣性が証明された。Absorb群とXience群との比較で、心臓死の発生率(0.6% vs 0.1%; P=0.29)、標的血管心筋梗塞の発生率(6.0% vs 4.6%; P=0.18)、虚血に起因する標的病変血行再建術の施行率(3.0% vs 2.5%; P=0.50)に有意差は認めなかった。1年以内のデバイス血栓症は、Absorb群で1.5%、Xience群で0.7%で発生した(P=0.13)。

【結論】
非複雑性冠動脈疾患に対するエベロリムス溶出生体吸収性血管スキャフォールドによる治療は、エベロリムス溶出コバルトクロム合金ステントと比較し、1年の時点で非劣性が証明された。
平成27年11月24日(担当:柘植)

High-Flow Nasal Oxygen vs Noninvasive Positive Airway Pressure in Hypoxemic
Patients After Cardiothoracic Surgery A Randomized Clinical Trial
JAMA. 2015;313(23):2331-2339. doi:10.1001/jama.2015.5213.

【背景】
心臓胸部外科領域の手術後に急性呼吸不全となって低酸素血症を呈する患者には、再挿管防止に非侵襲的な換気が行われる。最近、忍容性が高く、適用が簡単なネーザルハイフローが用いられる頻度が上昇している。

【目的】
従来の間欠的BiPAP療法と、ネーザルハイフローの有効性を比較検討。

【方法】
フランス国内のICU6施設で、心臓胸部外科手術を受けた患者で、急性呼吸不全を発症した、あるいは発症リスクが高い830人を登録し、ネーザルハイフロー群(414人)と間欠的BiPAP群(416人)にランダムに割り付けた。ネーザルハイフロー群には、酸素をflow 50L/ 分で継続的に投与。間欠的BiPAP群にはPS 8cmH2O、PEEP 4cmH2Oによる酸素投与を1日4時間以上実施。FiO2は、両群とも50%で開始し、酸素化の目標を達成するまで調整し、治療を継続した。
主要評価項目は、治療の失敗(再挿管、割り付け以外の酸素投与法への変更、患者訴えによる治療の中止、胃拡張などの有害事象による治療中止) に設定。
副次的評価項目はICU入院中の死亡率や呼吸変数の変化などとして、intention-to-treat分析した。

【結果】
治療失敗率はネーザルハイフロー群で21.0%、間欠的BiPAP群では21.9%で、ネーザルハイフロー療法は間欠的BiPAP療法に対して非劣性であるという結果だった。
ICU死亡率は、ネーザルハイフロー群が28人(6.8%)、間欠的BiPAP群は23人(5.5%)。絶対差は1.2ポイント(-2.3から4.8、P=0.66)で有意差は見られなかった。
酸素投与開始からの呼吸変数への影響は、動脈血酸素分圧(PaO2)/FiO2比は、開始後1時間の平均値、6-12時間後までの平均値のいずれも、BiPAP群で有意に高かった。開始後1時間の1分間の呼吸回数平均値は、ネーザルハイフロー群で有意に少なかった。その他の変数に対する治療の影響は、両群間でほぼ同等だった。

【結論】
心臓胸部外科手術後に急性呼吸不全を呈した患者や、呼吸不全リスクが高い患者に対するネーザルハイフロー療法は、治療失敗のリスクについて間欠的BiPAPに対して非劣性である。

平成27年11月17日(担当:高田)

A Leadless Intracardiac Transcatheter Pacing System

【背景】
リードレスペースメーカーはポケット及びリードを無くすために開発された。

【方法】
多施設前向きシングルアーム試験において、ガイドラインで心室ペーシングの適応のあった患者にカテーテルで心室内ペースメーカーを植え込んだ。主要評価項目の解析は、300人の患者が6か月follow upに達した段階で行った。Primary safety end pointは、システム及び手技による合併症のない状態とした。Primary efficacy end pointは、6か月の段階で閾値が2v以下か1.5v以上の上昇がない状態とした。End pointの評価は、過去のデータを参考にして、それぞれ、82%、80%以上かどうかというperformance goalで評価した。また、過去のペースメーカー植え込みに関する論文のうち2667人を対象として合併症の頻度を比較した。

【結果】
725人の対象患者のうち、719人にデバイスを植え込むことができた。カプランマイヤー法でPrimary safety end pointは96%であり、performance goalで評価すると有意に高かった。725人中の25人において28の合併症があったが、dislodgementsはなかった。6か月観察された297人中292人でPrimary efficacy end pointは98.3%であり、performance goalで評価すると有意に高かった。28の合併症があったが、コントロール群に比べると有意に低かった。

【結論】
過去の論文と比較した今回の試験では、カテーテルで留置するペースメーカーは、事前に設定した安全性と効果の双方をみたすことができ、経静脈的にペースメーカーと同様の閾値の安定性をみたすことができた。

平成27年11月10日(担当:鈴木)

Duration of Triple Therapy in Patients Requiring Oral Anticoagulation After Drug-Eluting Stent Implantation(The ISAR-TRIPLE Trial)
JOURNAL OF THE AMERICAN COLLEGE OF CARDIOLOGY  VOL.65, NO.16, 2015

【背景】
心房細動や機械弁植込みなどのために経口抗凝固薬(OAC)を投与している患者に薬剤溶出性ステント(DES)を植込んだ場合、OACにアスピリンとクロピドグレルなどによる2剤併用抗血小板療法(DAPT)を加えた3剤併用療法が推奨されるが、至適治療期間は明らかでない。

【目的】
アスピリンとOACを服用中の患者において,DES植込み後の3剤併用療法におけるクロピドグレルの投与期間を6か月から6週間に短縮することで,正味の臨床転帰が改善するかを検討する。

【方法】
ヨーロッパの3施設(ドイツ2施設,デンマーク1施設)において、2008年9月から2013年12月にDES植え込み術を受けてアスピリンとOACを内服している患者を対象に行った。計614人の患者をクロピドグレルを6週間内服する群と、6か月内服する群とに無作為に割り付けてintention-to-treat解析による評価を行った。追跡期間は9カ月とし、一次エンドポイントは死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中、TIMI出血基準における大出血とする。

【結果】
一次エンドポイントの発生は6週間群で30例(9.8%)、6か月群で27例(8.8%)と両群に有意差を認めなかった(ハザード比1.14;95%信頼区間0.68~1.91;p=0.63)。心臓死、心筋梗塞、ステント血栓症、脳梗塞の複合エンドポイント(6週群12例[4.0%]vs 6か月群13例[4.3%]:ハザード比0.93;95%信頼区間0.43~2.05;p=0.87)、TIMI出血基準の大出血(6週群16例[5.3%]vs 6か月群12例[4.0%]:ハザード比1.35;95%信頼区間0.64~2.84;p=0.44)といった二次エンドポイントにおいても有意差は認められなかった。

【結論】
OACを投与しているDES植込み患者において,3剤併用療法の期間を6か月から6週間に短縮しても正味の臨床転帰は改善しなかった。これらの結果は、3剤併用療法の期間の選択には虚血と出血のリスクの検討がなされるべきであることを示唆している。

平成27年10月27日(担当:兼光)

A Multicenter Trial of Remote Ischemic Preconditioning for Heart Surgery
N Engl J Med 2015;373:1397-1407

Remote ischemic preconditioning (RIPC) は心臓手術を受ける患者において虚血のバイオマーカーや再還流障害を減らすと報告されている。しかし、臨床的な転帰に関しては不確実さが残る。
前向き、二重盲検、多施設、ランダム化試験を行った。
対象は、プロポフォールによる全身麻酔下に人工心肺を要する待機的心臓手術を受ける予定の成人。
上肢のRIPCと擬似手技との比較を行った。
一次エンドポインは、入院期間中の死亡、心筋梗塞、脳卒中、急性腎不全の合計とした。
二次エンドポイントは、90日間の死亡、心筋梗塞、脳卒中、急性腎不全の発生とした。
1403人の患者をランダム化し、完全な解析を1385人(RIPC群:692人;SHAM群:693人)に行った。

  複合PEP 死亡 心筋梗塞 脳卒中 急性腎不全
RIPC群 99 (14.3%) 9 (1.3%) 47 (6.8%) 14 (2.0%) 42 (6.1%)
シャム群 101 (14.6%) 4 (0.6%) 63 (9.1%) 15 (2.2%) 35 (5.1%)

実施計画に合致した集団の解析やサブグループ解析でも両群間に有意差はみとめなかった。
その他、両群間にトロポニン値、機械換気時間、ICU滞在時間、入院期間、新規心房細動発生率、術後せん妄発生率に有意差は認めなかった。
RIPC関連の有害イベントは観察されなかった。
プロポフォール麻酔下の上肢RIPCは待機的心臓手術を受ける患者に有益性を示さなかった。

平成27年10月20日(担当:佐竹)

Adenosine triphosphate-guided pulmonary vein isolation for atrial fibrillation: the UN masking Dormant Electrical Reconduction by Adenosine TriPhosphate (UNDER-ATP) trial. Eur heart J. 2015 doi:10.1093/eurheartj/ehv457.

【研究目的】
心房細動(AF)に対する肺静脈隔離(PVI)後の心房性頻脈性不整脈再発のほとんどは,左房-肺静脈間の再伝導により発生する。従って,この再伝導を永久的に遮断することが重要である。本試験はカテーテルアブレーションを施行するAF患者において、アデノシン三リン酸(ATP)ガイド下PVI vs 標準的PVIで、心房性頻脈性不整脈再発の抑制効果を検証した。また、同時に、アブレーション後90日間の抗不整脈薬(AAD)投与 vs プラセボ投与における心房性頻脈性不整脈再発の抑制効果も検証している。(未報告:EAST-AF試験:Efficacy of Antiarrhythmic drugs Short-Term use after catheter ablation for Atrial Fibrillation)。

<方向>

【研究デザイン】
2×2無作為割付け多施設研究(日本: 19施設)

【フォローアップ】
登録期間は2011年11月~2014年3月。追跡期間は384日(中央値)。

【対象患者】
2,113例。21~79歳,発作性・持続性・長期持続性AFに対する高周波カテーテルアブレーション初回施行患者。

【除外基準】
ATPまたはVaughan Williams分類I群・III群AAD禁忌(重度の気管支喘息・冠攣縮性狭心症・徐脈など),腎機能障害,NYHA心機能分類IV度,EF<40%,左房径>55 mm,AF罹病期間≧5年,心筋梗塞発症後<6か月,重症弁膜症など。

【患者背景】
平均年齢(ATPガイド下PVI群58.6歳,標準的PVI群68.5歳),男性(77.0%, 72.7%, p=0.01),BMI(24.3, 23.7kg/m²),AF罹病期間(23.3か月,26.4か月),AF病型(発作性:66.3%, 68.2%;持続性:22.0%, 23.4%;長期持続性:11.7%, 8.4%),CHADS2スコア(≦1:81.8%, 64.6%;2:12.7%, 21.5%),高血圧(47.6%, 58.9%),EF(64.2%, 64.6%),脳卒中・一過性脳虚血発作既往(5.9%, 10.8%),クレアチニンクリアランス(94.6, 74.4mL/分),無効AAD数(0:42.5%, 39.4%;1:39.3%, 41.1%;2:13.0%, 13.8%),経口抗凝固薬(warfarin:30.3%, 36.7%;dabigatran:46.7%, 41.3%;Xa阻害薬:17.9%, 19.2%, p=0.002),抗血小板薬(8.0%, 13.2%),β遮断薬(35.2%, 36.1%),ACE阻害薬・ARB(33.6%, 42.5%),Ca拮抗薬(30.0%, 40.9%),Vaughan Williams分類I・III群のAAD(30.0%, 31.0%)。

【手技背景】
左房roof line(18.2%, 21.7%, p=0.04),総通電回数(106回,101回;PVIのみ:83.7回,80.4回,ともにp=0.02),総通電時間(47.1分,45.5分;PVIのみ:37.1分,35.1分[p=0.005]),初回PVI成功~最終確認の時間(67分,61分),総手技時間(195分,192分),放射線量(399mGy, 370mGy)。

【アブレーション方法】
全例に広範囲同側肺静脈同時隔離法によるPVIを施行し,初回成功後に一定時間待機して自然発生再伝導が認められれば再焼灼を実施。ATPガイド下PVI群(1,112例):さらにATPテスト(ATP 0.4mg/kgの急速静注により不顕性PV伝導が顕在化するかを確認)を行い,再伝導が認められた場合は消失するまで焼灼を追加。消失が困難な場合に焼灼を中止するかどうかは術者に一任した。標準的PVI群(1,001例):ATPテストを行わない。その他のアブレーションを行うかどうかは術者と担当医に一任し,90日間のブランキング期間中のアブレーションは行わないよう強く推奨した。層別ランダム割付け時にシステムのプログラミングエラーのため2群間に不均衡が生じたが,事前に決定されていたCox比例ハザードモデルにより,層別変数(年齢・性別・施設・AFの病型)と90日間のAAD投与を調整して解析。

<結果>

【アブレーション成績】
初回PVI成功後(中央値43分)に自然発生再伝導を認めたのは,ATPガイド下PVI群474例(42.6%),標準的PVI群419例(41.9%)。ATPガイド下PVI群におけるATPテスト実施率は97.7%,ATPは初回PVI成功後57分(中央値)に投与された。ATPにより不顕性PV伝導が顕在化したのは307例(27.6%),このうち追加のアブレーションにより不顕性伝導が消失したのは302例(98.4%)。

【一次エンドポイント(心房性頻脈性不整脈の再発)】
死亡は5例,追跡不能は6例。1年後の心房性頻脈性不整脈の再発回避率に両群間で有意差は認められなかった(ATPガイド下PVI群68.7% vs 標準的PVI群67.1%:調整ハザード比0.89;95%信頼区間0.74~1.09, p=0.25)。発作性 vs 非発作性,左房アブレーション追加の有無などによるサブグループ解析の結果も同様であった。

【二次エンドポイント(再セッションの有無)】
1年後の心房性不整脈に対する再アブレーションにも差はみられなかった(0.83;0.65~1.08, p=0.16)。 ATPによる不顕性PVの顕在化を認めた症例と認めなかった症例の比較でも,心房性頻脈性不整脈の再発,再アブレーションともに差はみられなかった。

【手技の合併症】
周術期の死亡は両群ともになく,喘息,冠攣縮性狭心症,持続性低血圧(<90mmHgまたは昇圧剤投与を要するもの)などのATPに関連する合併症にも差はみられなかった。

【結論】
AFに対するカテーテルアブレーションにおいて,ATPガイド下PVIは標準的PVIにくらべ1年後の心房性頻脈性不整脈再発を有意に抑制はしなかった。

平成27年10月13日(担当:吉永)

Incidence and risk factors of postpericardiotomy syndrome reqiring medical attention: The Finland postpericardiotomy syndrome study.
J Thorac Cardiovasc Surg.2015 May;149(5):1324-9. doi: 10.1016/j.jtcvs.2015.01.031.

【目的】
心膜切開後症候群は開心術後の合併症の一つであるが、治療や入院を要する心膜切開後症候群の発生率や予測因子についてはよく知られていない。そこで発生率や予測因子を調査するのことがこの研究の目的であった。

【方法】
2008年~2010年に単独CABGが行われた688例を対象に後ろ向き調査が行われた。

【結果】
688例のうち、61例(8.9%)が心膜切開後症候群を発症した。診断日までの中央値は21日。13例が胸腔ドレナージ、3例が心嚢ドレナージを要した。
心膜切開後症候群を発症した群と発症しなかった群を比較すると、発症した群で、1単位もしくはそれ以上の赤血球輸血を行われた症例が有意に多かった。
また、発症した群で、糖尿病の罹患率が有意に低く、メトフォルミンを内服している症例が有意に少なかった。
多変量解析では、腎不全と1単位もしくはそれ以上の赤血球輸血が、心膜切開後症候群発症の独立予測因子で、糖尿病が保護因子であった。
61例のうち23例(38%)の症例で再燃を認め、BMIの増加が再発の予測因子であった。

【結語】
治療を要する心膜切開後症候群の発生率は、今回のstudyでは、8.9%と過去のstudyの10-40%と比較すると低かった。
心膜切開後症候群は赤血球輸血と関連しており、糖尿病の患者では少なかった。

平成27年09月15日(担当:武田)

Postural modification to the standard Valsalva manoeuvre for emergency
treatment of supraventricular tachycardias (REVERT): a randomised controlled trial
Lancet. 2015; (published online Aug25.) http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(15)61485-4.

【背景】
発作性上室性頻拍(PSVT)治療として、バルサルバ法は広く行われているが、 頻拍の停止率は5-20%と低く、結局、不快感を伴うアデノシン注射治療を必要とする。 今回、体位を変えたバルサルバ変法の効果を調べた。

【方法】
英国の救急施設においてPSVTを発症した患者をランダムに1:1にバルサルバ 従来法群と変法群に割り付けた。両群とも40mmHgの圧で呼気し、そのまま15秒息こらえを行った。変法群はその後、背臥位となり、他動的に下肢を挙上した。1次アウトカムは治療後1分の時点での洞調律復帰とした。

【結果】
各グループ214名ずつの患者に割り付けた。従来法群では37名(17%)が洞調律に復帰し、変法群では93名(43%)が洞調律に復帰した(p < 0.0001)。

【考察】
PSVT治療において、息こらえに引き続き下肢挙上を行うバルサルバ変法は初回治療として検討されるべきであり、患者にも教育しておくべきである。

平成27年09月8日(担当:柘植)

Effect of Remote Ischemic Preconditioning on Kidney Injury Among High-Risk
Patients Undergoing Cardiac SurgeryA Randomized Clinical Trial JAMA. 2015;313(21):2133-2141. doi:10.1001/jama.2015.4189.

【背景】
急性腎障害は、心臓手術における頻度の高い合併症であるが、急性腎障害のリスクを軽減する介入法は確立されていない。

【方法】
ドイツの4病院で2013年8月から2014年6月にかけて、心臓のオンポンプ手術を受ける予定の患者のうち、急性腎障害リスクが高い患者(Cleveland Clinic Foundationスコアが6以上)240人を、カフ加圧 群とコントロール群にランダムに割り付けた。麻酔導入後に一方の上腕に血圧計のカフを装着。カフ加圧群には、遠隔虚血プレコンディショニング操作を実施した。コントロール群には、シャム処置を行った。主要評価項目は、術後72時間以内のKDIGO基準に基づく急性腎障害の発生。副次的評価項目は、術後72時間以内の急性腎障害(中等症~重症)、入院中の透析施行、ICU入院期間、入院中の心筋梗塞と脳卒中の発生、院内死亡、30日総死亡、術後24時間以内の急性腎障害バイオマーカーの変化に設定。

【結果】
結果はカフ加圧群では、急性腎障害の発生が有意に軽減された。急性腎障害は、カフ加圧群37.5%とコントロール群52.5%で発生し、絶対リスクは15ポイント減少した(95%信頼区間2.56-27.44、P=0.02)。カフ加圧群では、入院中に透析が施行率も減少(5.8% VS 15.8%)。絶対リスクは10ポイント減少(2.25-17.75、P=0.01)。ICU入院期間も短く、それぞれ3日と4日で、差は有意だった(P=0.04)。心筋梗塞、脳卒中、死亡には有意な影響は見られなかった。術後の急性腎障害バイオマーカー値も差が認められた。尿中のIGFBP-7とTIMP-2の、人工心肺装着から4時間の時点の濃度の積は、カフ加圧群が0.36ng/mL2/1000、コントロール群は0.97ng/mL2/1000で、加圧群のほうが低値であった(P<0.001)。遠隔虚血プレコンディショニングに関連した有害事象は報告されなかった。

【結論】
心臓手術を受ける急性腎障害ハイリスク患者に対して、遠隔虚血プレコンディショニングを行うと、急性腎障害の発生や透析の必要性を低下させた。

平成27年07月21日(担当:梅田)

Clostridium difficile infection after cardiac surgery: Prevalence, morbidity, mortality, and resource utilization.
J Thorac Cardiovasc Surg. 2014 Dec;148(6):3157-65.e1-5. doi: 10.1016/j.jtcvs.2014.08.017. Epub 2014 Aug 14.

【背景】
感染予防対策が進歩してきているにもかかわらず、病院関連のクロストリディウム感染(CDI)の有病率は増加傾向にある。そこで、開心術後のCDI関連の有病率や合併症に関する検証が行われた。

【方法】
2005年1月から2011年1月にクリーブランドクリニックで行われた開心術症例22952例を対象とした。
CDIは、毒素に対する酵素免疫測定法、またはPCR法で診断され、その結果と長期生存をマッチした非感染群と比較検討した。

【結果】
術後平均9日間で145例の患者がCD陽性となり、(135例は酵素免疫測定法、11例はPCR法で診断された。) 77例は他院から搬送。73例は術前に抗生剤を使用。79例はPPIを使用していた。
CDI群は、非感染群と比較すると、術前からの合併症が多く、再手術、輸血を受けている症例が多かった。
すべての症例には、メトロニダゾールもしくはバンコマイシンが投与された。
16例が死亡し、中毒性結腸炎になった10例のうち5例が死亡。全結腸切除が行われた4例のうち3例が生存した。
CDI群は、非感染群と比較して、敗血症、腎不全、再手術、術後長期人工呼吸管理、長期入院が有意に多く、3年生存率も有意に低かった。

【結語】
CDIの有病率は増えてきており、開心術後の合併症や死亡率に大きく関与していた。

平成27年07月14日(担当:布田)

Less-Tight versus Tight Control of Hypertension in Pregnancy N Engl J Med 2015; 372:407-417January 29, 2015

【背景】
妊娠中の高血圧を緩やかにコントロールした場合と厳格にコントロールした場合で、妊娠合併症への影響が異なるかどうかは明らかにされていない。

【方法】
妊娠 14 週 0 日~33 週 6 日の女性で、蛋白尿を伴わず、妊娠前からの高血圧または妊娠高血圧を有し、外来拡張期血圧が 90~105 mmHg(降圧薬を使用している場合は 85~105 mmHg)で、胎児が生存している例を対象に、多国間多施設共同非盲検試験を行った。妊婦を、緩やかなコントロール(目標拡張期血圧 100 mmHg)と厳格なコントロール(目標拡張期血圧 85mmHg)に無作為に割り付けた。複合主要評価項目は、妊娠喪失または生後 28 日間における48 時間を超える高度の新生児ケアとした。副次的評価項目は、産後 6 週まで、または退院までのいずれか遅いほうに発生した重篤な母体合併症とした。

【結果】
987 例を解析の対象とし、その内74.6%が妊娠前から高血圧を有していた。平均拡張期血圧は緩やかなコントロール群のほうが 4.6 mmHg(95%信頼区間 [CI] 3.7~5.4)高かったにもかかわらず、主要評価項目の比率は緩やかなコントロール群の 493 例と厳格なコントロール群の 488 例とで同程度であり(それぞれ 31.4%と 30.7%,補正オッズ比 1.02,95%CI 0.77~1.35)、重篤な母体合併症の比率も同程度であった(それぞれ 3.7%と2.0%,補正オッズ比 1.74,95% CI 0.79~3.84)。重症高血圧(収縮期血圧 160 mmHg 以上または拡張期血圧 110 mmHg 以上)は緩やかなコントロール群の 40.6%、厳格なコントロール群の 27.5%で生じた(P<0.001)。

【結論】
妊娠中の高血圧の緩やかなコントロールは母体の重症高血圧の頻度において、厳格なコントロールと比較して有意に高いことに関連していた。しかし、妊娠喪失や高度の新生児ケア、母体合併症全般のリスクには両群間で有意差が認められなかった。

平成27年07月07日(担当:高田)

Effect of a Retrievable Inferior Vena Cava Filter Plus Anticoagulation vs Anticoagulation Alone on Risk of Recurrent Pulmonary Embolism A Randomized Clinical Trial JAMA. 2015;313(16):1627-1635

【背景】
急性静脈塞栓症の患者では、抗凝固療法に加えて、回収可能型の下大静脈フィルターが留置されることが多いが、下大静脈フィルターの効果については明らかでない。

【目的】
急性肺塞栓患者において抗凝固薬単独もしくは下大静脈フィルターを追加した場合の肺塞栓再発に対する効果と安全性を評価する。

【方法】
ランダム化、オープンラベル、blinded end point試験。2006年8月から2013年1月までに下肢の静脈血栓による急性肺塞栓で入院した患者を、抗凝固療法単独群とフィルター追加群に分けて6か月間観察した。参加施設はフランス17施設。

【治療】
患者は十分な抗凝固療法を最低6か月は行った。フィルター留置群では3か月後にフィルター抜去を予定した。

【主要評価項目】
主要評価項目は3か月までの症候性肺塞栓の再発。二次評価項目は6か月までの肺塞栓の再発、下肢静脈血栓、出血、3か月と6か月での全死亡、およびフィルターの合併症。

【結果】
フィルターグループでは193例にフィルターが留置され、抜去されたのは抜去を試みた164例中153例であった。3か月までの肺塞栓再発は、フィルター群で6例(3.0%)、コントロール群で3例(1.5%)であった。6か月までの結果も同様であった。他の評価項目でも2群間に有意さはみとめられなかった。フィルター血栓症は3例に起きた。

【結論】
重症肺塞栓で入院した患者において、抗凝固療法にフィルターを追加する治療は3か月までの肺塞栓の再発リスクを有意に低下させることはできなかった。この結果から抗凝固療法の可能な肺塞栓患者において抜去可能型下大静脈フィルターを用いることをサポートしない結果となった。

平成27年6月16日(担当:菅野)

Patiromer in Patients with Kidney Disease and Hyperkalemia Receiving RAAS Inhibitors N Engl J Med 2015;372;211-21

【背景】
高カリウム血症は死亡リスクを上昇させるため、高リスク患者ではレニン–アンジオテンシン–アルドステロン系(RAAS)阻害薬の使用が制限される。そこで、非吸収性カリウム吸着薬であるパチロマーの安全性と有効性を評価した。

【方法】
RAAS 阻害薬を服用中の高K血症の慢性腎臓病(CKD)患者に、パチロマーを 4 週間投与。初期治療期の主要有効性評価項目は、ベースラインから 4 週目までの血清カリウム値の変化の平均とした。4週目の終了から、8週間の無作為化治療中止期に組み入れ、パチロマーを継続する群とプラセボへ切り替える群に無作為に割り付けた。

【結果】
初期治療期には、血清カリウム値の変化の平均は-1.01±0.03 mmol/Lであった(P<0.001)。4週目の時点で,患者の76%が目標値(3.8から5.1 mmol/L)を達成していた。無作為化治療中止期には、107 例をパチロマー群(55例)とプラセボ群(52例)に無作為に割り付けた。
この期間のベースラインからのカリウム値上昇の中央値は、プラセボ群のほうがパチロマー群よりも大きく(P<0.001)、8週目までに高カリウム血症の再発が認められた患者の割合は、プラセボ群60%に対し、パチロマー群15%であった(P<0.001)。有害事象は便秘がもっとも頻度が高く、低カリウム血症は3%に発現した。

【結語】
RAAS 阻害薬を服用中の高カリウム血症を伴うCKD患者において、パチロマー治療は血清カリウム値を低下させ、プラセボと比較して高カリウム血症の再発の減少にも関連した。

平成27年5月26日(担当:佐竹)

Efficacy of β blockers in patients with heart failure plus atrial fibrillation: an individual-patient data meta-analysis The Lancet Volume 384, No. 9961, p2235–2243, 20 December 2014

【背景】
心房細動と心不全はしばしば共存し心血管死を招く。βブロッカーは左室収縮の低下した症候性心不全患者に適応があり生命予後を改善することが示されているが、心房細動を合併した患者への有効性は明らかではない。それ故、メタ解析によって、心不全患者に対するβブロッカーの有効性を心房細動合併例と、洞調律例とで比較検討した。

【方法】
βブロッカーを心不全例に使用した10の無作為化比較試験の患者データを使用した。対象が洞調律であるか、心房細動であるかは、ベースラインのデータがどちらかで判断した。(そのため、発作性心房細動が洞調律群になった可能性はあり。)主要エンドポイントは、全死亡とした。

【結果】
登録数18,254例 (洞調律76% 心房細動17%)
平均追跡期間:1.5年

【死亡率】
(βブロッカー群の対プラセボ群ハザード比)
洞調律例0•73, 0•67—0•80; p<0•001
心房細動例0•97, 0•83—1•14; p=0•73

【考察】
ESC、 AHA/ACCのガイドラインでは、心房細動を合併した心不全にβブロッカーの使用が奨励されているが、洞調律と違い、心房細動では、より遅い心拍数は予後と関係がないことが2014年のJACCに掲載されている。本研究では、心房細動を合併した心不全患者におけるβブロッカーの使用は、全死亡を減少させず、スタンダードな治療ではないかもしれない。

【結論】
今回の結果では、心房細動を合併した心不全患者の予後を改善させる標準治療として、βブロッカーを、レートコントロール目的以外に進んで使用すべきではない。

平成27年5月12日(担当:吉永)

Surgical Ablation of Atrial Fibrillation during Mitral-Valve Surgery N Engl J Med 2015; 372:1399-1409

【背景】
僧帽弁手術を受ける患者の30-50%に心房細動がみられる。心房細動は生存率の低下と脳卒中リスクの増加に関連している。心房細動の外科的アブレーションは広く行われているが、その安全性や有効性に関するエビデンスは限られている。

【方法】
持続性心房細動もしくは長期持続性心房細動の患者260例が、僧帽弁手術時に外科的アブレーションが行われたアブレーション群とアブレーションが行われなかったコントロール群に振り分けられた。
アブレーション群はさらに、PV isolation群と両心房メイズ(Cox-maze Ⅲ)群に分けられた。

【結果】
6か月と12か月の両時点における心房細動が発生していない割合は、アブレーション群がコントロール群より多かった。
PV isolation群と両心房メイズ群では、心房細動が発生していない割合に有意差はなかった。
1年後の死亡率は、アブレーション群で6.8%、コントロール群で8.7%であった。
アブレーション群はコントロール群と比較して、永久ペースメーカー植え込みの割合が多いという結果であった。
また、両群間で、心・脳血管有害事象、重篤な有害事象、再入院に関して有意差はなかった。

【結語】
持続性心房細動もしくは長期持続性心房細動の患者に対する僧帽弁手術時の心外科的アブレーションは、1年の時点で、心房細動の回避率を上昇させた。
しかし、永久ペースメーカー植え込みのリスクも上昇させた。

平成27年4月12日(担当:武田)

Randomized Trial of Primary PCI with or without Routine Manual Thrombectomy N Engl J Med 2015; 372:1389-1398

【背景】
ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)に対する血栓吸引療法の有効性は様々な報告があるが未だに結論づけられていない。

【方法】
対象は発症12時間以内のST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)であり、血栓吸引療法の有効性を検証するための大規模RCT(n=10732)を行った。
主要エンドポイントとして、180日以内の心血管死、心筋梗塞再発、心原性ショック、心不全(NYHA IV)の出現で評価し、安全性エンドポイントとして、30日以内の脳卒中で評価した。

【結果】
主要エンドポイントは血栓吸引+PCI群347/5033人、PCI単独群351/5030人で、HR0.99と有意差を認めなかった。また、30日以内の脳卒中は血栓吸引群で有意に上昇(HR2.06)した。

【結論】
PCI前のルーチン血栓吸引療法は180日のアウトカムを改善せず、30日の脳卒中発生率を増加させた

平成27年04月07日(担当:柘植)

Results of Low-Dose Human Atrial Natriuretic Peptide Infusion in Nondialysis Patients With Chronic Kidney Disease Undergoing Coronary Artery Bypass Grafting Journal of the American College of Cardiology doi:10.1016/j.jacc.2011.03.056

【目的】
CABGを行った非透析CKD患者に対する低容量hANPの有効性に関して検討。

【背景】
CKDは心臓手術の重要なリスクファクターである。

【方法】
RCTで、対象はバイパス術を受ける非透析CKD患者303人。hANP使用群と非使用群に割り付け。主要エンドポイントは①術後透析回避率 ②血清クレアチニン値とeGFR。
二次エンドポイントは、①術後早期の成績②術後1年の手術成績③術後最高クレアチニン値と、クレアチニン上昇率④ANPとcGMPレベル

【結果】
術後クレアチニン値は術後早期、1年後とも、hANP群で低値。
術後最高クレアチニン値とクレアチニン上昇率は、hANP群で低い。(p=0.00665 , p<0.0001).
術後1年間での死亡率は両群で差がない。
心イベント発生率と透析導入率は、hANP群で低い。(p<0.0001 , p=0.0014)

【結論】
術後急性期ではhANPは心腎保護効果を示し、透析導入率を低下させた。
周術期のhANPは、腎不全でオンポンプCABGを施行する患者に有効である可能性がある。

平成27年03月24日(担当:高田)

Should Atrial Fibrillation Patients With 1 Additional Risk Factor of the CHA2DS2-VASc Score (Beyond Sex) Receive Oral Anticoagulation?
J Am Coll Cardiol 2015;65:635–42

【背景】
CHA2DS2-VASc score (心不全, 高血圧, 75歳以上, 糖尿病, 脳梗塞, 血管疾患, 65-74歳, 女性) はアメリカ及びヨーロッパのガイドラインにおいてAF患者のリスク層別化に推奨されているが、スコア1点の患者に対しては抗凝固すべきなのか未だ不明である。

【目的】
CHA2DS2-VASc score1点の男性と2点の女性における虚血性脳卒中のリスクと各リスク因子での危険度を調査する。

【方法】
National Health Insurance Research Database in Taiwanを使用した。AFで抗血小板剤及び抗凝固薬の内服のない186,570人のうち、CHA2DS2-VASc score1点の男性とCHA2DS2-VASc score2点の女性を評価した。clinical endpointは虚血性脳卒中である。

【結果】
12,935人のCHA2DS2-VASc score 1点の男性のうち, 1,858 人(14.4%) が5.2年の観察期間で脳梗塞を発症し, 年率2.75%であった. 脳梗塞のリスクは、血管疾患を持つ男性の1.96%/年から、65-74歳の3.50%/年まで分布していた. 7,900人のCHA2DS2-VASc score 2点の女性AF患者のうち、観察期間中に14.9% が脳梗塞となり、年率2.55%であった。リスクは、高血圧の女性の1.91%/年から65-74歳の3.34%/年まで分布していた。

【結論】
CHA2DS2-VASc scoreの各因子が等しいリスクを持つわけではなく、65-74歳という年齢の因子が最も高いリスクとなっていた。抗凝固療法に関しては、CHA2DS2-VASc score1点の患者でも考慮されるべきであろう。

平成27年03月17日(担当:北濱)

Angiotensin–Neprilysin Inhibition versus Enalapril in Heart Failure N Engl J Med 2014; 371:993-1004September 11, 2014

【背景】
これまでの臨床試験でエナラプリルは、EFが低下した心不全患者の生存を改善することが証明されています。今回はアンジオテンシンⅡ受容体とネプリライシンの両者を阻害する 新薬、LCZ696 とエナラプリルを比較しています。

【方法】
対象は、8442人の心不全患者で、NYHA分類はII~IV 度、EFが40%以下で標準的な心不全治療を受けています。新薬であるLCZ696とエナラプリルを投与する群を無作為に分け、二重盲検試験をしています。主要評価項目は、心血管死亡または心不全による入院としております。

結果】
LCZ696に圧倒的有益性がありました。主要評価項目、死亡数、心血管死亡いずれもエナラプリルよりも優れていました。主要評価項目である心血管死亡または心不全による入院は、LCZ696 群で914 例(21.8%)、エナラプリル群で1,117 例(26.5%)発生しました。全死亡数はLCZ696 群で711 例(17.0%)、エナラプリル群で835 例(19.8%)で、そのうち心血管死亡はLCZ696 群で 558 例(13.3%)、エナラプリル群で 693 例(16.5%)でした。また、LCZ696はエナラプリルと比較して、心不全による入院のリスクが 21%低下し(P<0.001)、心不全による症状と身体的制限が軽減された(P=0.001)という結果も出ました。
以上よりLCZ696 は、エナラプリルより死亡リスクと心不全による入院リスクを減らす点で優れているとしております。

平成27年03月03日(担当:佐竹)

Warfarin use and the risk for stroke andbleeding in patients with atrial fibrillation undergoing dialysisCirculation.2014;129:1196-1203.

【背景】
観察研究における血液透析中の心房細動患者に対するワーファリンの脳梗塞と出血のリスクの評価は決着がついていない。

【方法と結果】
1998-2007年の期間、カナダのケベック州、オンタリオ州で、心房細動の診断があり入院した65歳以上の患者に対して、後ろ向きコホート研究を行った。透析患者(腹膜透析を含む)と非透析患者に分けて、対象施設に心房細動を病名に含む患者が、退院後30日以内のワーファリンが処方されたかどうかで、ワーファリン内服群と非内服群にグループ分け、ワーファリンの使用と脳梗塞、出血性合併症の関係を調査した。最終的に1626例の透析患者と、204,210例の非透析患者を検証した。
透析患者群では、46%(756/1626)の患者がワーファリンを内服していた。透析患者群では、ワーファリン使用者がより慢性心不全、糖尿病を有していたが、非ワーファリン使用者と比べて登録依然の出血はほとんど見られなかった。交絡因子を調整しハザード比を検証したが、透析患者群で、ワーファリン内服は脳梗塞発生の低下と関係がなかった。(調整ハザード比:1.14、 95CI:0.78-1.67)。
しかし、一方で、透析患者群ではワーファリン内服により44%出血性合併症が増加した。(調整ハザード比:1.44、 95%CI:1.13-1.85)propensity scoreで調整を行ったが、同様の結果であった

【結論】
本研究は心房細動を有する透析患者において、ワーファリンの使用は脳梗塞発生を減少させるという観点からは利益がなく、高い出血性合併症のリスクと関係していた。今後の無作為化比較試験による検証が望まれる。

平成27年2月24日(担当:吉永)

Early and late outcomes of acute type Aaortic dissection with intramural hematoma J Thorac Cardiovasc Surg. 2015Jan;149(1):137-42. doi:
10.1016/j.jtcvs.2014.10.028.

Intramural hematoma(IMH)による急性A型解離の術後の早期成績と遠隔期成績を検証。

2000年から2013年に、筆者らの施設で手術をされた418例の急性A型解離の患者が対象。IMHによるA型解離の群(IMH群)とIMHではない典型的なA型解離の群(非IMH群)に分けて、解析された結果、IMH群は、64例。
非IMH群は354例でした。
IMH群の方が高齢で、息切れ、循環障害、脈拍欠損、中等度から高度のAR、90以下の低血圧、破裂は少ないという結果でした。
両群間で、カニュレーション、術式、術中輸血に差はありませんでしたが、IMH群の方が発症から手術までの時間が長く、体外循環時間、大動脈遮断時間、逆行性脳灌流時間は有意に少ないという結果でした。
術後30日以内の死亡、入院死亡は両群間で差はありませんでした。
非IMH群では発症から3日以内に28例(7.9%)が死亡しましたが、IMH群では死亡はありませんでした。
年齢と術前の腎機能を調整して遠隔期の生存率を検証したところ、IMH群の方が生存率は有意に良いという結果でした。

平成27年02月10日(担当:武田)

難治性狭心症における冠静脈洞径縮小デバイスの有効性
N Engl J Med 2015; 372:519-527February 5, 2015.

【背景】
血行再建の適応とならない、難治性冠動脈疾患による狭心症の患者に対し、冠静脈洞径を縮小させる砂時計型のバルーン拡張型デバイスの有効性を検証した。

【方法】
カナダ心血管学会(CCS)分類でIII~IV 度の重症狭心症を有し、血行再建術の適応とならない患者104例を、デバイス植込群(治療群)と偽治療群(対照群)に無作為に割り付けた。主要評価項目は、6ヵ月の時点でCCS分類が2度以上改善した患者の割合とした。

【結果】
6ヵ月の時点でCCS分類が2度以上改善したのは、治療群35%、対照群15%であった(P=0.02)。
また,治療群の71%でCCS分類が1度以上改善し、対照群では42%であった(P=0.003)。
シアトル狭心症質問票を用いて評価したQOLは、治療群では対照群と比較して有意に改善した。
運動負荷時間や、ドブタミン負荷心エコー検査による評価では、有意差は認められなかった。

結論】
Phase IIの小規模臨床試験では、血行再建の適応とならない難治性狭心症患者において、冠静脈洞径縮小デバイスは,症状とQOLを有意に改善させた。

平成27年01月27日(担当:柘植)
Transfusion Requirements After Cardiac Surgery The TRACS Randomized Controlled Trial 2010 Oct 13;304(14):1559-67.

【背景】
心臓外科手術では輸血施行率が高く、40%-90%といわれている。重症貧血は心臓外科手術後の罹病率と死亡率の独立した危険因子と言われている。輸血はコストが高く、また感染症、神経系合併症、腎不全などの有害事象発生率、術後の生存率低下との関連があるとされている。輸血はヘモグロビンやヘマトクリットの低下に基づいて行われることが多いが、輸血を開始する基準に関して、エビデンスに基づくガイドラインはない。

【方法】
前向き無作為化対照試験で、人工心肺を用いて行われた待機的手術患者502例を対象とし、十分量の輸血を行う群と輸血を制限する群に割り付けた(除外症例:18歳未満、緊急手術、大動脈手術、慢性貧血、凝固障害、肝障害、末期腎臓疾患、同意拒否の患者)。十分量の輸血を行う群は、手術開始から集中治療室を出るまでの間、ヘマトクリット値が30%未満になった時点で赤血球輸血を行い、輸血制限群は、ヘマトクリット値が24%未満になった時点で赤血球輸血を行った。
一次エンドポイントは術後30日間の全死亡率および入院中の重度合併症発生率(心原性ショック、ARDS、ARFの発症)を含む複合エンドポイントとした。ベースラインでの両群の特性および手術中における術式に関連した変数は、両群間で同等であった。

【結果】
Hb値は、十分量の輸血群で10.5g/dL(95%CI:10.4~10.6)、輸血制限群で9.1g/dL(95%CI:9.0~9.2)であった(p<0.001)。輸血施行率は輸血制限群と比較し,十分量の輸血群に多くみられた(78% vs. 47%,p<0.001)。輸血された赤血球総単位数は、十分量の輸血群で613、輸血制限群で258であった(p<0.001)。新鮮凍結血漿、血小板ま、寒冷沈降物の使用に関して群間差はみられなかった。一次複合エンドポイントは、十分量の輸血群の10%(95%CI:6%~13%)、輸血制限群の11%(95%CI:7%~15%)にみられた(群間差1%[95%CI:−6%~4%,p=0.85])。多変量Cox解析において、輸血されたRBCの単位数と術後30日間の死亡リスク上昇に関連がみられ、そのHRは1.2であった(95%CI:1.1~1.4,p=0.002)。

【結論】
輸血の制限は周術期の予後に影響を与えなかった。

平成27年01月20日(担当:高田)

Is Epinephrine During Cardiac Arrest Associated With Worse Outcomes in Resuscitated Patients?
Florence D, Wulfran B, et al.
J Am Coll Cardiol 2014;64:2360–7

【背景】
エピネフリンは自発循環復活(ROSC)に必須であるが、心停止回復後への影響は議論の余地がある。

【目的】院外心停止患者のうち心拍再開した患者において、病院到着前に投与されたエピネフリンと機能的生存との関係を調査する。

【方法】2000年1月から2012年8月までに、cardiac arrest centerに入院した、院外心停止後心拍再開した全患者を対象とした。
エピネフリンの使用はyesかnoによる記録か、doseにより記録を用いた。退院時の神経障害については、cerebral performance category1または2を良好とした。解析は、多変量ロジスティック解析、傾向スコア、及びマッチングにより行った。

【結論】
1556名の対象患者のうち、73%の1134人がエピネフリンの投与を受けており、このうち17%の194人が良好な予後であったが、エピネフリン非投与群では、422人のうち63%の255人が良好な予後であった。このエピネフリン投与者での予後の神経学的予後の悪さは、心停止の時間や入院後の治療に関係なくみとめられた。エピネフリン非投与群に比べて、エピネフリン投与者の調整オッズ比は、1mg投与群で0.48、2-5mgで0.30、5mgより上で0.23でdoseに比例していた。また、エピネフリン投与群では、エピネフリン投与が遅いほど予後不良であった。

評価】
この観察研究の結果から、エピネフリン投与は入院後の治療にかかわらず予後不良であることが示唆された。心停止患者でのエピネフリン投与が長期予後と相関するかは、今後検討が必要である。

平成27年01月13日(担当:菅野)

Early eicosapentaenoic acid treatment after percutaneous coronary intervention reduces acute inflammatory responses and ventricular arrhythmias in patients with acute myocardial infarction:A randomized, controlled study
International Journal of Cardiology 176 (2014) ; 577-582

2010年11月から2012年12月にかけて救急搬送されたAMI患者115名を57名のEPA投与群と58名のコントロール群に分け追跡を行った。
主要エンドポイントは1か月以内の心臓死、再梗塞、心室不整脈、心房細動。
結果、EPA投与は1か月以内の主要エンドポイントを著明に低下させた。特に心室不整脈で著明に低下した(7 vs 20.6 p=0.03)。EPA群におけるPCI後のpeak CRPはコントロール群と比べて低下(8.2(5.6-10.2)㎎/dl vs 9.7(7.6-13.9)mg/dl)。
以上から、AMI患者へPCI後早期にEPA投与させることは、心室不整脈を減少させ、CRP値を低下させることが分かった。

平成27年01月06日(担当:兼光)

CPAP, Weight Loss, or Both forObstructive Sleep Apnea
N Engl J Med 2014;370:2265-75.
肥満と閉寒型睡眠時無呼吸症候群は共存し、ともに炎症、インスリン抵抗性、脂質代謝異常、高血圧と関連している。 しかし、それらの因果関係ははっきりしていない。

【方法】181人の中等度から重度の閉寒型睡眠時無呼吸症候群を合併しているCRP1.0㎎/L以上の肥満患者。
ランダムにCPAP群、減量群、CPAP+減量群に割り付け、24週間観察。
CPAP+減量群に付加的効果があるかをCRPレベル、インスリン感受性、脂質、血圧について検討。

【結果】
CPAP+減量群:CRP、インスリン抵抗性、中性脂肪、血圧で低下。
CPAP群:血圧のみ低下。
減量群:CRP:インスリン抵抗性、中性脂肪、血圧で低下。
CPAP+減量群 vs.CPAP群;減量群:CRPに差なし。
CPAP+減量群 vs.CPAP群:インスリン抵抗性、中性脂肪で差あり。
CPAP+減量群 vs. 減量群:インスリン抵抗性、中性脂肪に差なし。
条件を満たした90人について検討すると、CPAP+減量群は単独群に比して、収縮期血圧と平均血圧の低下に差があった。

【結論】
CRPについては、CPAP+減量群は単独群と比して、付加的減少効果は認めず。
インスリン抵抗性や中性脂肪値については、減量はCPAPと組み合わせることで付加的効果を示す。
減量やCPAPのアドヒーランスは、単独群に比してより血圧を低下させる可能性がある。