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循環器内科

循環器内科・心臓外科合同抄読会 平成24年

平成24年12月18日(担当:武田)

Bangalore S, et al. Outcomes with various drug eluting or bare metal stents in patients with diabetes mellitus: mixed treatment comparison analysis of 22 844
patient years of follow-up from randomised trials. BMJ. 2012; 345: e5170.
無作為化試験42件・10714例(2万2844人年の追跡)を対象に、糖尿病患者における薬剤溶出ステント(DES)の有効性と安全性をメタ解析で評価した。
対象は新規病変に対して施行した4種類のDESとベアメタルステント(BMS)を互いに比較したランダム化比較試験で,糖尿病患者50例以上を含み,追跡期間が6ヵ月以上のものとした。
結果、BMSに比べDESは標的血管の血行再建施行率が有意に低く、死亡、心筋梗塞などのリスク増加がなかった。DESの中ではエベロリムス溶出性ステントの有効性と安全性が最も高かった。

平成24年12月4日(担当:柴)

Dabigatran Association With Higher Risk of Acute Coronary Events Meta-analysis of Noninferiority Randomized Controlled Trials.
Arch Intern Med. 2012;172(5):397-402.
新しい抗凝固薬ダビガトランが心筋梗塞(MI)や急性冠症候群(ACS)の発症を増加させる可能性があることをメタ解析で示した論文です。著者らは全部で7つの臨床試験(N=30514)を選択してfixed-effects Mantel-Haenszel testを行っています。
ダビガトランはMIやACSの発症と有意に(Odds Ratio 1.33,P=0.03)関連しており、医師は心血管イベント増加の可能性があることを認識すべきだと結論付けています。Discussionでは、対照薬の多くに使用されたワルファリンにMIやACSの予防効果が存在しているため見かけ上この現象が認められた可能性について述べられています。

平成24年11月20日(担当:菅野)

Intraaortic Balloon Support for Myocardial Infarction with Cardiogenic Shock
N Engl J Med 2012. DOI: 10.1056/NEJMoa1208410
急性心筋梗塞による心原性ショックを発症した早期に血行再建術予定の600人の患者をIABPグ ループ301人あるいは無IABP の対照群299人に割り当て、心原性ショックを合併した心筋梗塞に対するIABPの効果について議論した。30日間の全死因死亡はIABPグループ中の119人(39.7%)および対照群中の123人(41.3%)であった。その結果、今回の研究ではIABPは心原性ショックを合併した心筋梗塞に対して死亡率を有意に軽減できていないという事を結論付けた。

平成24年11月13日(担当:兼光)

Long term outcomes in men screened for abdominal aortic aneurysm: prospective cohort study
BMJ 2012;344:e2958 (Published 4 May 2012)
スコットランドの地方で8146人の男性を対象としたコホート研究。腹部大動脈径で1)30mm以上、2)25-29mm (ecstatic aorta)、3)24mm以下の三群に分けて、罹病率、死亡率について検討した。ectatic aorta群では、24mm以下の群に比して死亡率や心血管病、慢性閉塞性肺疾患による入院のリスクが高かった。また、計測後2年で、ectatic aorta群では、腹部大動脈瘤による入院が増加した。これらの結果から、著者らはectatic aorta群には危険因子のコントロールや、大動脈径の再測定が必要だろうと結論した。

平成24年11月6日(担当:吉永)

Aortic root conservative repair of acute type A aortic dissection involving the aortic root: Fate of the aortic root and aortic valve function
J Thorac Cardiovasc Surg 2012;12:1010-7.
大動脈基部まで進展した急性A型解離の手術時に人工血管置換術と大動脈弁形成術(resuspension)を施行された患者196例について、大動脈弁形成術の有用性と術後の大動脈基部の拡大と大動脈弁逆流(AR)を検証した試験:結果は、早期死亡率は5.1%と良好で、ARも有意に改善していました。中等度以上のARをきたした症例は5例、大動脈基部が45mm以上に拡大した症例は19例で、大動脈基部置換術を要したのはLoeys-Dietz症候群の1例のみでした。
解析の結果、発症時の大動脈基部の最大径は術後のARと大動脈基部拡大の予測因子となるとの報告でした。大動脈弁形成術は有用な術式ですが、将来、大動脈基部の拡大が予想される症例に対しては、大動脈基部置換術、reimplantationなどの術式を考慮すべきだと指摘されていました。

平成24年10月30日(担当:國友)

Early surgery versus conventional treatment for infective endocarditis.
N Eng J Med 2012;366:2466-73
感染性心内膜炎の外科治療の適応とタイミングについては、心不全を伴う場合や感染病巣の広がりによる組織破壊の進行が高度である場合は速やかな外科手術を行うことに異論はないが(クラスⅠ)、塞栓症を繰り返す場合や消失しない疣贅を有するものについての手術はACC-AHAガイドライン上クラスⅡaとされているものの、塞栓症を引き起こす可能性の高い大きな疣贅だけではクラスⅡbとされ特に2009年ESCガイドラインでは15mm以上でもクラスⅡbとなっている。
著者らは、10mm以上の大きな疣贅を有する76人の患者(左心系病変、弁病変重度、心不全や高度組織破壊病変を伴わないもの)をランダムに早期手術群と内科治療群に分け、エンドポイントを死亡、塞栓症イベント、IE再発にして1年経過観察した。早期手術群はランダム化後48時間以内に手術したが、内科治療群でも経過中30名(77%)に外科手術が必要となった。6週での死亡は早期手術1、内科治療1と差はなかったが、塞栓症イベント(8:0)や死亡+塞栓症イベントの複合エンドポイント(9:1)において早期手術群の予後が有意に良かった。この傾向は6か月時点でも同様であった(8:0、11:1)。結論として、10mm以上の大きな疣贅を有する感染性心内膜炎患者では、塞栓症予防に早期手術の方が内科治療より有用である。

平成24年10月16日(担当:上小牧)

Risk of pneumonia associated with use of angiotensin converting enzyme inhibitors and angiotensin receptor blockers: systematic review and meta-analysis
BMJ. 2012; 345: e4260. Published online 2012 July 11. doi: 10.1136/bmj.e4260
PubMed、Web of science with conference proceedings、FDA websiteのデータベースから、ACE阻害薬およびARBと肺炎リスクの関連を検討した論文や、文書を抽出し、37件の報告を解析対象した、無作為比 較試験およびコホート研究。
ACE阻害薬群は,対照群およびARB群と比べ,肺炎リスクがそれぞれ34%,31%低かった。脳卒中患者ではACE阻害薬群のリスクがほぼ半減。アジア人は非アジア人と比較し、大きなリスク低下がみられた。肺炎関連死のリスクはACE阻害薬群、ARB群のいずれにおいても少し減少していた。両者の肺炎治療の内容に差はなかった。
以上より著者は、肺炎の危険性を減少させると考えられるのはARBではなくACE阻害薬であり、特に脳卒中既往者とアジア人は空咳のような許容できる有害事象が発生しても、ACE阻害薬の服用中止を勧めない方が良いと結論づけた。

平成24年10月9日(担当:吉永)

What makes the difference between the natural course of a remaining type B dissection after type A repair and primary type B aortic dissection?
Eur J Cardiothorac Surg 2012;41:e110-116.
急性A型解離術後に残存するB型解離を有する患者247例と急性B型解離の患者112例の慢性期における危険因子、結果、外科的介入(胸腹部置換、TEAVR)の必要性について比較、検証した試験:A型解離術後に残存するB型解離の患者では、エントリー開存群が閉塞群より外科的介入の回避率が有意に低く、エントリーの開存は慢性期の外科的介入の予測因子になり得ると指摘されています。
急性B型解離の患者では、エントリー開存群と閉塞群の外科的介入の回避率に有意差はなく、5年後には両群とも50%以上の患者が外 科的介入を要しました。また、偽腔の閉塞状態は、A型解離術後のB型解離と急性B型解離の慢性期の外科的介入の予測因子にはならないとの結果でした。

平成24年10月2日(担当:武田)

Comparative outcomes for patients who do and do not undergo percutaneous
coronary intervention for stable coronary artery disease in New York.
Circulation. 2012 Apr 17;125(15):1870-9. Epub 2012 Mar 22.
COURAGE研究(New Engl J Med 2007)では、安定狭心症患者をランダムに至適薬物療法群(OMT群)とOMTに加えPCI治療を施行した群に分けたところ、予後に有意差を認めなかった。
本論文では、ニューヨーク州で過去に冠動脈造影を施行された安定狭心症患者のうち、通常薬物療法群(RMT群)とRMTに加えPCIを施行した群(RMT/PCI群)両群の年齢、性別、リスクファクターなど20項目を合致させた各933例の4年の予後を調査した。結果、死亡率、心筋梗塞発症率、血行再建術施行率全てにおいて、RMT/PCI群の予後が良好であった。通常診療レベルの薬物療法であるRMT下では、PCIにより血行再建を行った方が予後が良い可能性が示された。

平成24年9月18日(担当:柘植)

Effects of preoperative aspirin in coronary artery bypass grafting:
A double-blind, placebo-controlled, randomized trial.
The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery Volume 144, Issue 1, July 2012, Pages 204-209
現在、エビデンスがないにもかかわらず、多くの外科医はCABG手術の時までアスピリン使用を継続している。本研究では術前のアスピリン使用が有用であるか否かを検討している。シングルセンターでランダム化二重盲検プラセボコントロール試験(アスピリン群390人、プラセボ群399人)を行い、術前のアスピリン使用の安全性、有効性について解析した。
その結果、アスピリンを使用した上でのCABGは術後出血を増加させるが、ドレーン抜去までの時間が長くなったり、再開胸の必要性が増加する訳ではないが輸血の必要度が高くなった。有効性に関しては、短期予後は変わらず、長期的にはMIや再血行再建のリスクを減少させるという結果になった。

平成24年9月4日(担当:柴)

Cigarette smoking as a risk factor for coronary heart disease in women compared with men: a systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies. Lancet 2011; 378:1297-305.
わが国においても若い女性の喫煙率が上昇傾向にあることが知られています。多くは体重増加を抑制するために行われています。この研究では、26文献、全体で3912809人を対象にしたメタ解析を行って、喫煙と冠動脈疾患発生の関連が性別でどのような差異があるかを検討しています。
非喫煙者に対する喫煙者の冠動脈疾患発生リスクは男性に比較して女性のRelative Risk Ratioが1.25と有意に高いことが示されました。また、喫煙歴のない人と、以前に喫煙していたが現在は禁煙しているひとでは冠動脈疾患発生に性差がないことが明らかになりました。

平成24年6月12日(担当:柘植)

Prediction of asymptomatic abdominal aortic aneurysm expansion by means of rate of variation of C-reactive protein plasma levels.
Journal of Vascular Surgery Vol. 56, Issue 1, Pages 45-52
無症候性の腹部大動脈瘤患者435人について、1)瘤径と血漿hs-CRP値の関係、2)瘤の拡大速度とhs-CRP値の変化の関係について検討。
瘤径と血漿hs-CRP値とは相関するが、瘤径と年齢・喫煙の有無などは関連がない。また、瘤の拡大速度と関連があるのは初期径とhs-CRP値の変化率であり、高血圧の有無や初期のhs-CRP値とは関連なし。以上からhs-CRP値は、腹部大動脈瘤の進行と拡大速度のマーカーとして利用できる可能性があると言えます。

平成24年6月5日(担当:武田)

Evaluation of the Second Generation of a Bioresorbable Everolimus Drug-Eluting Vascular Scaffold for Treatment of De Novo Coronary Artery Stenosis: Six-Month Clinical and Imaging Outcomes
Circulation. 2010;122:2301-2312.
改良型生体吸収性エベロリムス溶出性スキャフォルド(BVS)の6ヶ月後の臨床成績がABSORB試験のcohortBとして発表されました。45例にBVSを留置し、6ヶ月後の冠動脈造影では1例のみがステント端に再狭窄を来し(再狭窄率2.4%)ました。IVUSとOCTを用いた解析では、初期型BVSで問題となった慢性期のリコイルは解消され、血管内腔も十分に維持されていました。改良型BVSは冠動脈非複雑病変は現状のDESと匹敵する成績と安全性が得られました。

平成24年5月29日(担当:吉永)

Two-Year Outcomes after Transcatheter or Surgical Aortic-Valve Replacement
N Engl J Med 2012;366:1686-95.
大動脈弁狭窄症の手術ハイリスク患者に対して経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)を施行された348例と大動脈弁置換術(AVR)を施行された351例の成績を比較、検証した試験:術後2年の死亡率は両群間で有意差はありませんでした。脳梗塞、一過性脳虚血発作に関しては、頻度はTVARで多くみられましたが、有意差はありませんでした。術後、症状、弁血行動態は改善しても、TAVR群においては弁周囲逆流が晩期死亡率に相関すると指摘されています。

平成24年5月22日(担当:菅野)

Carotid artery stenting compared with endarterectomy in patients with symptomatic carotid stenosis (International Carotid Stenting
Study): an interim analysis of a randomized controlled trial
Lancet.2010;375(9719):985-997.
症候性頸動脈狭窄患者に対して行った、頸動脈ステント留置術(CAS)と内膜剥離術(CEA)における成績の比較をした試験:CASはintention to treat解析にて120日以内でCEAと比較すると、脳卒中、死亡、周術期心筋梗塞リスクが明らかに高いと結果がでています。また、治療後30日間でper-protocol解析にて比較をしても、同疾患に罹患するリスクはCASで有意に高いことも述べられていました。

平成24年5月15日(担当:柴)

Transcatheter Aortic-Valve Replacement for Inoperable Severe Aortic Stenosis
N Engl J Med 2012;366:1696-704.
外科手術不適応の大動脈弁狭窄症358例に対して経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の有用性を検証した試験:PARTNER試験の長期成績を報告しています。TAVRは症状・死亡率・入院率を低下させ、弁血行動態の改善は術後2年でも維持されていました。一方、複数の合併症がある場合は、その有効性は低下する可能性があることも指摘されています。