診療科のご案内

形成外科

その他の先天異常(副耳、でべそなど)

頭蓋顎顔面領域

当科では頭蓋骨縫合早期癒合症、顔面裂、第1・第2鰓弓症候群などの頭蓋顎顔面領域の先天異常を骨切り手術によって治療し、形態の改善を図ります。

先天性眼瞼下垂症

先天性眼瞼下垂では眼瞼挙筋の機能がほとんどない場合が多く、手術は簡単ではありません。しかし、手術により症状を改善することは可能です。

手術方法

眼瞼挙筋短縮術

麻酔
全身麻酔
入院期間
術後約1週間

耳の異常

耳は複雑な形をしており、先天的にさまざまな形の異常が報告されています。

副耳(ふくじ)

耳の前や頬にイボ状に突起したもので、皮膚だけでなく軟骨を含むことが多く、その有無によって治療の時期や方法が異なります。

治療方法
  1. コメ粒程度の小さいものは手術用絹糸などで縛ります(無麻酔)。先端の血行がなくなり1~2週間で脱落します。
  2. ある程度の大きさで軟骨を含まないものは、局所麻酔による日帰り手術も可能です。
  3. 大きいものや軟骨を含むものは、入院・全身麻酔下に軟骨を含めての切除が推奨されます。 耳前部の傷跡はほとんど目立ちません。
麻酔
局所麻酔なら3か月以降、全身麻酔を行う場合は1歳前後以降が適切です。

小耳症(しょうじしょう)

耳の先天異常のうち変形が最も強く、耳の形が不完全なものをいいます。反対側の聴力が正常であれば日常生活上、機能的な問題はあまりありません。

手術方法

耳の軟骨は複雑な凹凸があり、これを再現するには、ある程度の軟骨の量が必要です。それだけの量を確保するには患者様自身の軟骨(肋軟骨)3~4本分が必要です。
彫刻刀などで削り込んでいくつかのパーツをつくり、木綿糸程度の細いワイヤーで接合して立体的な形を再現します。しかし、本物の耳介軟骨は薄くて折り曲げられる弾力性がありますが、同じ軟骨でも肋軟骨は硝子様軟骨といって折り曲げられる弾力性がありません。したがって、どうしても健側耳介に比べて分厚く固い耳になってしまいます。
皮膚は、残っている皮膚が十分広ければそのまま利用できますが、狭い場合は組織拡張器(ティッシュエキスパンダー)を使って、軟骨フレームを入れる部分の皮膚を膨らませてゆとりをつくる方法があります。
軟骨フレームを入れるだけの十分な皮膚があるか否かで、第1回目の手術が決まります。


  1. 組織拡張器を使わない方法
    最初の手術時に軟骨でつくった耳型を移植します。2回目の手術で耳を正常の高さに立てますが、確実に耳を立てるためには耳の後ろに支えとして、少量の軟骨を追加移植します。立てた耳の後ろ側には植皮をします。
  2. 組織拡張器を使う方法
    最初の手術で組織拡張器を埋め込み、2~3週間後から週1回のペースで組織拡張器に生理食塩水を注入して数か月かけて膨らませます。充分に膨らんだら2回目の手術を行います。2回目では軟骨で耳型をつくり、膨らませた皮膚の中に移植します。

※1・2いずれも耳たぶの修正手術や、傷の修正手術などの追加手術が必要になることがあります。合併症として、肋軟骨採取の際に気胸を生じることがあります。移植した軟骨に感染、吸収による変形、ワイヤー露出などを生じることがあります。

手術時期
肋軟骨の太さや顔面の成長などから、最適年齢は10歳前後です。
入院期間
組織拡張器埋入術:約1週間
肋軟骨移植術:約1週間~10日間
耳介挙上術:約2週間
術後ケア
数回の手術のあとに立体的な耳の形が浮かび上がってきますが、腫れが引くには数か月の時間を要します。また、実際の耳介形状とは厳密には異なります。とくに耳の中央部の深い陥凹を再現することはなかなか困難です。

耳前瘻孔

耳の形成過程での異常により、耳の周囲に耳介軟骨に達する小さなトンネル(瘻孔:ろうこう)が開いたものをいい、頻度の高い疾患です。化膿していない状態では無症状ですが、瘻孔から臭いチーズのようなカスが出ることもあります。一生、無症状のまま経過することもありますが、穴から細菌が入って化膿を繰り返す場合があります。

手術方法

手術は、耳瘻孔を含めて管状や袋状のものをすべて取り去ります。

手術適応
化膿したことのない耳瘻孔では、経過観察でも支障はありません。しかし化膿した既往があれば、摘出手術を勧めます。通常は、化膿が治ってから1~2か月待って、炎症を生じた部分が鎮静化してから手術を行います。
麻酔
成人では外来通院で局所麻酔下に摘出可能です。幼小児は術中の鎮静が必要なため、入院・全身麻酔下に行います。
入院期間
全身麻酔では3日から約1週間の入院が必要になります。

埋没耳

耳の上半分が皮膚に埋もれた状態をいい、袋耳ともいいます。指で斜め後ろに引っ張ると正常の形になりますが、はなすと元に戻ります。耳介の一部分の変形なので、聴力の心配はありませんが、マスクや眼鏡のツルがかけられない機能的問題があります。

治療方法

第1選択は装具による矯正治療が行われます。埋もれた耳介を引き出すように保つ簡単な装具を作成します。年齢が進むと軟骨が固くなり、矯正が難しくなりますからできるだけ低年齢でスタートします。装具の継続期間は矯正開始までの月齢分以上が必要といわれます(矯正開始が3か月児なら3か月以上継続、6か月児なら6か月以上・・・)。1歳以降では嫌がって外したり、軟骨が固く矯正しにくかったりします。


手術方法

手術法はさまざまなものがありますが、基本は埋もれた耳介上半分を引っ張り出してマスクやメガネが掛けられるように耳の切れ込みをつくることです。

手術適応
装具治療が効かなかった場合や、年長児になって初めて形成外科を受診された場合は手術による治療を検討します。
麻酔
全身麻酔
入院期間
7日~10日間程度。術後は必要に応じて装具の装着や、メガネやマスクを装着して切れ込みを維持するケアを行います。
手術時期
陥凹部分の肋軟骨や胸骨自体が柔らかいため、手術は10才ぐらいまでに行った方が治療によく反応するからです。
麻酔
全身麻酔
入院期間
手術後数日はプレートのずれ防止のためベッド上安静ですが、慣れてくれば歩行もできるようになります。約7日~10日間の入院が大半です。

副乳

人の乳房は左右一対が普通ですが、数の過剰な乳房を副乳といいます。わきの下から乳頭を通り、太ももの付け根に至る線上にみられます。大きさはさまざまで、年齢とともに乳腺組織が発育して、乳房として大きく膨らんでくるものもあります。また月経周期とともに膨らむことがあります。

手術方法

手術で副乳組織を取り除きます。

手術適応
外観上、気になれば手術適応です。
麻酔
成人の場合は局所麻酔で日帰り手術でもできます。

陥没乳頭

乳頭が突出せず、奥へ引き込まれている状態をいいます。妊娠しても乳頭が陥没したままで突出してこない場合は授乳できなくなるので早めの治療が必要です。

手術方法

持続吸引で簡単に突出できる軽症例では手術も比較的容易ですが、持続吸引でもまったく突出してこない重症例では修正が難しいといわれます。乳管を切断すれば修正は容易ですが、授乳機能が消失してしまいます。そのため乳管を十分剥離して引き出す方法が行われます。

手術適応
通常は持続的吸引(吸引装置はさまざまな製品が入手できます)を用いた保存的治療を行い、治療に抵抗する重症例が手術適応といえます。
麻酔
局所麻酔
術後ケア
術前と同様の持続吸引装置による術後ケアを行います。

臍突出症・臍ヘルニア

臍は、臍帯が切断された後、乾燥脱落した断端が瘢痕収縮して陥凹した状態になります。臍帯が腹腔内から左右の腹直筋の間を貫いて体外に出る部分は「臍輪」と呼ばれ、繊維が臍帯の周囲をしっかりと輪状に取り巻いていて、腹腔内容が腹壁外にはみ出てこないようになっています。
臍窩であるべき部分が陥凹しないで、逆に突出した状態を「臍突出症」と呼びます。臍輪が閉じており瘢痕組織により皮膚が押し上げられて臍突出を呈しているものは、俗に「でべそ」と呼ばれています。
また、臍輪が開いていて腹腔内容が腹膜に包まれた形で脱出し、臍ヘルニアを呈しているものを「臍ヘルニア」といいます。

手術方法

単なる臍突出症と臍ヘルニアでは、手術法が異なります。


  1. 臍突出症では、突出した臍を正中で臍輪まで切開し、臍輪と臍皮膚との間に存在する瘢痕組織を除去して、皮膚弁状となって切り開かれた皮膚を適切な位置の臍輪に陥凹固定させて、よい形の臍をつくります。
  2. 臍ヘルニアでは、隆起したヘルニア嚢上の皮膚を皮膚弁として頭側、尾側,左右側にそれぞれ茎としたものを作成し展開し、腹膜に包まれたヘルニア嚢を腹腔内に還納し、腹直筋同士を正中に寄せて縫合し、ヘルニア門を閉鎖します。左右頭側の皮膚弁はトリミングしながら腹直筋鞘に固定し十分な深さの形のよい臍窩をつくります。
手術適応
臍突出症は機能的障害はありませんが、形態の改善が望まれるときには適応になります。臍ヘルニアは、機能的にも適応があります。
手術時期
先天性では、1歳くらいまでに自然治癒が期待できます。それ以降が手術時期といえます。
入院期間
1週間程度必要ですが、術後形のよい臍になるまで約6か月間のアフターケアが重要です。