主な診療内容(治療法)
経皮的心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)
カテーテルという細い管を足の付け根から血管を通じて、心臓に入れ、不整脈の原因を発生する部位にやけどを作る(焼灼する)ことで、異常な電気信号の流れを遮断(アブレーション)します。胸を開く外科的手術と違い、体への負担が少なく、治療後翌日から歩行可能です。 ただし患者さまの状態によって、複数回の治療が必要となる場合もあります。
当院では最新の3次元マッピングシステムを導入しており、通常の上室性不整脈に加え、心筋梗塞、拡張型心筋症などの器質的疾患、先天性心疾患に伴う複雑な心房性・心室性頻拍、経中隔アプローチによる左房起源心房性不整脈などの高度アブレーション治療にも対応しています。全国的に症例数が大幅に増加している心房細動のカテーテルアブレーションも適応を十分検討したうえで積極的に行っており、良好な成績を収めています。
ペースメーカ治療
ペースメーカとは脈が遅い不整脈に対する植込み型治療機器です。自分の脈を正常に保つために補助的に電気信号を送る医療機器です。脈が遅くなった時に作動して心臓に電気刺激を与え、心臓が正常に収縮するようにサポートします。2018年からはより生理的な心臓収縮を可能とするペーシング治療(His束)も積極的に行っています。
2017年からはカプセル型の本体に電気回路や電池、電極なとの全てか組み込まれているリードレスペースメーカが臨床応用されています。ペースメーカ本体は足の付け根(鼠径部)の静脈を通して心臓まで運ばれ、運んだカテーテルから切り離され、心臓に直接留置されます。従来の経静脈型ペースメーカ治療における静脈内のリードの合併症および体表面(前胸部)にある本体による日常生活の制限が解消されます。現在は心臓の下の部屋(心室)のみのペーシング可能であり、適応は徐脈性不整脈の一部となっています。
植込み型除細動器(ICD)・着用型除細動器(WCD)
致死的頻脈性不整脈に対する植込み型治療機器(ICD)です。突然死につながる頻脈性不整脈を自動的に検出し、 電気ショックを心臓に放出し、不整脈を停止させます。前胸部に除細動器本体を植え込み、血管をとおしてリードと呼ばれる線を心臓内に留置します。リード線を通して、常に心臓の興奮をモニターしており、危険な不整脈発生時に本体から心臓内のリード線へ電気ショックを放出することにより、不整脈を停止させます。
2016年からは心臓内にリード線を留置しない皮下植込み型除細動器(S-ICD)が臨床使用開始されております。除細動器本体を左側胸部におき、リード線は皮下をとおして、胸骨前面に留置します。本体とリード線の間で頻脈性不整脈を検出した場合、本体からリード線にむけて電気ショックを放出します。従来の植込み型除細動と比し、血管・心臓内にリード線を留置しないことにより、リード断線、重篤な感染症、血管内閉塞のリスクが回避可能となっております。ただし心臓内にリード線がないため、脈が遅い不整脈に対するペーシング機能はなく、病態に応じて両タイプを選択します。
ICD植え込みが直ちにできないもしくは心臓の状態が変化する可能性のある心臓突然死のリスクが高い方にたいして、ICD植え込み決定までの一時的な橋渡し治療として着用型除細動器(WCD)があります。WCDはICDのように胸部に植え込むのではなく、常時体の外から着用し、生命をおびやかす不整脈を検出すると除細動電極から青いジェルが自動で放出され、正常なリズムに戻すために電気ショックがでます。あくまでICDまでの橋渡し治療であり、最長3ヶ月間の装着となります。
両心室ペーシング治療(CRT)
心不全症例の中に、心臓の収縮のずれが生じ、心臓の拍出の効率が低下している場合があります。両心室ペーシンング治療とは、左右の心室からペーシングすることにより、心臓収縮のずれを改善し、心臓の拍出の増加し心不全を改善させる治療です。現在の適応としては、労作時の息切れ、体のむくみなどの心不全症状があり、明らかな心臓の収縮のずれが認められる症例となります。